今週の一枚 miwa『SPLASH☆WORLD』

今週の一枚 miwa『SPLASH☆WORLD』 - 『SPLASH☆WORLD』 初回生産限定盤『SPLASH☆WORLD』 初回生産限定盤

“夜空。feat ハジ→”以降のシングル収録曲が5曲入っていて、映画『君と100回目の恋』関連曲が2曲収められている。それだけでもトピックは充分に思えてしまうところがあるが、この約22ヶ月ぶりのオリジナルアルバム(その間にバラードコレクションを挟んでいる)で注目したいのは、華々しいトピックの裏側にある、表現者・miwaの息遣いである。

まず、強烈な推進力と瑞々しいサウンド、アップテンポなストリングスとホーンのアレンジを纏って突き進むオープニング曲“SPLASH”のコンポーズと歌唱にぶっ飛ばされる。ちょっとバカみたいな表現になってしまうが、ライブで触れる“Delight”や“君に出会えたから”、そして“希望の環(WA)”の力強さと優しさ、スケール感をすべて兼ね備えてしまったような凄まじい楽曲だ。その直後に、あのNコンの課題曲となった“結 -ゆい-”が続く。普通に考えたら作品の最高潮を担うような2曲が、アルバムの冒頭にいきなり配置されているのである。

その後にもシングル曲が続き、5曲目に“君と100回目の恋”が、6曲目にandropのメンバーと共作した劇中歌“アイオクリ”が置かれている。サントラでもムービーバージョンを聴いたが、内澤崇仁とのデュエットを交え、お互いの可能性を引き出した美しいコラボ曲である。“Princess”や“シャンランラン”のフォーキーで膨らみのある響きも、アルバムのピースとして味わいを残してゆく。実はシングルでこの2曲に触れたとき、もしかすると次のmiwaのアルバムはこんなふうに豊かで溌剌とした作風になるのかと予想したが、彼女はそのイメージを遥かに越えるアルバムを作り上げてくれた。

miwaという表現者のキャリアは、驚異的な速度で成長してきた作曲技術や演奏力のみならず、「どうすれば人々とより深く関わり、結び付き合うことができるか」という根本的なテーマに基づいて自身の力を向上させる道のりだった。かつての“希望の環(WA)”プロジェクトや“結 -ゆい-”の取り組み、そしてナレーター業や俳優業への挑戦も、その一部だったろう。ハジ→、androp(今回は“泣恋”の演奏にも参加している)と続いたコラボワークには、“変わらぬ想い with Scott & Rivers”(スコリバのレパートリーだったが、miwaが新たに作詞に参加している)という1曲が加わった。

つまり『SPLASH☆WORLD』というアルバムは、miwaがひとりのミュージシャンとして以上に、「どうすれば人々とより深く関わり、結び付き合うことができるか」というテーマを、その生き方を、最高の形で結実させた作品なのである。“SPLASH”にしたためられた《はじける水のリズム》というフレーズが、どこまでも豊かでありながら澱みのない、このアルバムのイメージを捉えている気がする。ロックなmiwaが聴きたい、というファンにも、“ATTENTION”が完璧に応えてくれるだろう。(小池宏和)
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