今週の一枚 星野源『恋』

今週の一枚 星野源『恋』 - 『恋』 10月5日発売『恋』 10月5日発売

星野源
『恋』
10月5日発売

なんて優しく力強く、そして底知れない抱擁力を感じさせる4曲なのだろう。2016年10月11日(火)からスタートするTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(原作は海野つなみによるコミック)に出演する星野源のニューシングル表題曲は、同ドラマ作品の主題歌だ。タイトルはズバリ“恋”なのだが、ドラマのストーリーには契約結婚というテーマが織り込まれているということで、この“恋”という歌がどのような響き方をするのかも気になる。実におもしろそうだ。

“恋”は、華やかなオリエンタル風味ストリングスやマリンバの旋律に彩られた楽曲だが、『YELLOW DANCER』以降の温かみに満ちたソウル/ダンス的要素も継承されている。《意味なんか/ないさ暮らしがあるだけ/ただ腹を空かせて/君の元へ帰るんだ》という現実的な一節からの、《恋をしたの貴方の/指の混ざり 頬の香り/夫婦を超えてゆけ/二人を超えてゆけ/一人を超えてゆけ》という、音楽の力を借りたダイナミックな跳躍が素晴らしい。完璧な星野源節である。

アルバム『YELLOW DANCER』やツアー「YELLOW VOYAGE」は、日本語ポップスの在り方を刷新する画期的な意味を持っていた。歴史の中で洋楽の影響を受けながら、日本人の感性に響く音や語感、その硬度や湿度を保ってきた歌謡曲。その価値を見直そうとしたのだ。最新の洋楽に追いつけ追い越せという姿勢はもう古い。我々日本語使いの感性とは一体どういうものなのか、それを探り、現代人の心に響く新しい歌謡曲を見つけなければならない。そんな星野源の姿勢は、たとえば最も新しく価値のあるラブソングを、或いは、最も新しく価値のある愛の概念を捕まえようとしている。

カップリングの“Drinking Dance”は、ハウス食品『ウコンの力』のCM曲に用いられたご機嫌なディスコナンバーだが、《水を飲めば 少し楽しい》というフレーズについては、熱心なファンならニヤリとさせられるだろう。さらに、スカパー!のパラリンピック放送テーマ曲に使用された“Continues”は、強い意志のコーラスに彩られた素晴らしい楽曲だ。なお、“雨音(House ver.)”は、いわゆるハウスミュージックではなく、シングルでは恒例となっている「宅録」という意味のハウス。綺麗な曲なのに、ちょっと悪戯心を感じさせるセルフアレンジとなっている。

それにしても、ACジャパンの“Hello Song”や、先頃報じられた新曲“Non Stop”(ニュース記事はこちら→http://ro69.jp/news/detail/149194)と、リリースが気がかりな新曲はまだまだ残されている。どうにも目を離す隙を与えてくれないアーティストだ、星野源という人は。(小池宏和)
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