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SUNSET STAGE 19:00

痛みも慈しみも描き切った、浜辺の美しき轟音

初日の陽が沈んだところで、SUNSET STAGEのトリを務めるべく登場したのは、きのこ帝国の4人。陶酔感を呼び込む“MAKE L”がSEとして鳴り響く中に、佐藤千亜妃(Vocal, Guitar)、あーちゃん(Guitar)、谷口滋昭(Bass)、西村“コン”(Drum)がすっと位置につき、美しいギターリフレインと、潮風に髪をなびかせる佐藤のクリスピーな節回しが伝う“クロノスタシス”だ。シンプルに挨拶を挟み込んで、キャリア初期からのレパートリー“畦道で ”へと繋ぐのだが……ヤバい、気持ちよすぎる。流れる空気も温度も湿度も、少しずつ深まる闇も、すべてがきのこ帝国のための演出なのではないかと思えてくる。テンポをぐっと上げて駆け抜ける“35℃”は、まさに今この瞬間を抱きしめるためのサウンドトラックのようだ。美麗なまま歪む音響に吹かれ、包み込まれる。



“WHIRLPOOL”に“海と花束”と、バンドの歩みをサウンドに託すようにしながら、美しいライヴは進んでゆく。そして、孤独で悲痛な夜の時間とまっすぐに向き合い、エモーショナルな歌と音で塗り込めてゆく圧巻の“夜が明けたら”。「新曲やります」という一言と共に披露されるのは、先頃の「きみと宝物をさがすツアー」ファイナルでも披露されていた新曲“クライベイビー”だ。強い意志と愛情を宿した歌が、しなやかなメロディとグルーヴに後押しされてゆく。「次の曲で最後になります。きのこ帝国でした。風の強い中、観てくれてありがとう。“東京”」。佐藤の言葉にひときわ大きな歓声が上がり、それを押し返すように轟音が鳴り響いていった。夢中になってステージを見つめ、身を揺らすオーディエンスの姿も照明に浮かび上がる。このままずっと続けばいいのに、と思える時間が、そこにはあった。(小池宏和)

このフェスの模様を「ROCKIN’ON JAPAN 7月号(5/30発売)」にてレポートします。お楽しみに!

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