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EARTH STAGEの黒い海を前に立った斉藤和義が、本人含め5人編成のバンドによるどっしりとしたロックンロール・グルーヴの中で歌いだす。ギターはおなじみキセル辻村兄に加え、フジファブリックの山内総一郎だ。オープニング・ナンバーは今年10月にリリースされた最新アルバムのタイトル曲でもある"Are you ready?"だ。「ヘイ幕張ぃー!!」と満場のオーディエンスを渋い声のシャウトで煽り立てつつ、《声が枯れるまで ボクは歌うロックンロール》と、まさにショウのオープニングに相応しい決意表明の一曲を聴かせるのであった。続いては鋭いギター・フレーズの応酬から、斉藤が両の手でマラカスを振り、高速ファンク・グルーヴの中で歌われる"Stick to fun! Tonight!"。最新型の、最もホットな斉藤和義を見せつけてくれるショウになりそうだ。なのに。「イエエエエーイ……こんちはー、斉藤です~。えー、何ですかね、たくさんありがとうございます。俺としてはこれが今年最後のライブということで、朝、ひとヌキして来たので、調子もいいです」と、一転しての脱力MC。せっちゃん全開なのである。気を取り直して、2010年のヒット・シングル"ずっと好きだった"の甘酸っぱい、ルーズなロック・ナンバーで一挙挽回だ。うん、どんな状況で歌われようが、名曲は名曲である。素晴らしい。更に目映い光を振りまく"Small Stone"へ。なんという「歌の人」なんだろう。本当に一曲一曲で、広大なEARTH STAGEの空気を塗り替えてしまうのだ。

新しい楽曲群が続けて放たれた後、斉藤はアコースティック・ギターを爪弾いて1994年発表の静謐なラブ・ソング"彼女"を披露する。バンドのダイナミックな演奏だけでなく、こうした楽曲でもがっちりとオーディエンスを掌握してしまうのが凄い。そして"I Love Me"の情熱的なスパニッシュ風ギター・カッティングでフロア一面のハンド・クラップを誘い、"ベリー ベリー ストロング ~アイネクライネ~"ではまさに歌詞で歌われるとおりに、バンドの熱い演奏とオーディエンスを強い絆で結びつけ、大きくうねらせるのであった。極め付けは、せっちゃん流ロックンロールの金字塔"歩いて帰ろう"だ! 盛大なクラップでリズムを取りながら、預けられた歌詞をしっかりとステージに投げ返すオーディエンスたち。「帰ろうー! よいお年をー!!」と、歓喜のうちにフィナーレを迎える、実に美しいショウであった。(小池宏和)