【知りたい】NUMBER GIRL、奇跡の再結成! 2002年の突然の解散までの歴史を大解説

【知りたい】NUMBER GIRL、奇跡の再結成! 2002年の突然の解散までの歴史を大解説
「売れる売れない二の次で、恰好のよろしい歌ば作り、聴いてもらえりゃ万々歳。そんな私は傾奇者――人呼んでNUMBER GIRLと発します」
向井秀徳(Vo・G)がNUMBER GIRLのライブMCで浪曲師の口上の如く語っていたその言葉は決して伊達でも酔狂でもなく、NUMBER GIRLというバンドの音楽と姿勢を明快に象徴するものだった。

イヤホンで聴いても鼓膜越しに全身が震えてくるような凄味に満ちた鉄弦の軋みと太鼓の鳴動。
聴く者すべての焦燥も煩悶も日常から引き剥がして衝動渦巻くカオスの真っ只中へ叩き込む、戦慄必至の獰猛な絶唱――。
1995年の結成から7年、メジャーデビューからわずか3年半で2002年に解散するまでの間、彼らは真にオルタナティブと呼ぶべきロックミュージックを、メンバー4人の真剣勝負の如き切磋琢磨によって鍛え上げ研ぎ澄ませ続けてきた。
解散から16年以上経った今なお、そのサウンドが強烈な誘引力を持ち続けているのは取りも直さず、NUMBER GIRLというバンドが、ロックの迫力も楽しさも危うさも刹那性も爆発力も……要は僕らがロックに求める「想像を超えるスリル」のすべてを持ち合わせていたからに他ならない。

はいから狂いの 少女たちは 桃色作戦で
きらきら光っている 街かどは今日も アツレキまくっている
とにかく オレは 気づいたら 夏だった!!

透きとおって見えるのだ 狂った街かどきらきら……
気づいたら俺は夏だった風景
街の中へきえてゆく
(“透明少女”)

ピクシーズソニック・ユースなど洋楽オルタナの影響と、eastern youthbloodthirsty butchers/fOULをはじめとする日本のオルタナ〜ハードコアの血脈の接点から向井秀徳が描き出す、鋭利で冷徹で硬派でセンチメンタルな(そして一貫して日常と酩酊の狭間から描かれる)楽曲世界。
フロアを圧倒し熱狂させる田渕ひさ子(G)のジャズマスター激演、極太ルート弾きで頭も体も震撼させる中尾憲太郎(B)のベースプレイ、怒濤の加速感とダイナミズムに満ちたアヒト・イナザワ(Dr)の爆裂ドラミング、向井のテレキャスターの清冽な響きが奏でる感情の軋轢そのもののミステリアスなコードワーク……といった唯一無二のプレイスタイルが織り成す、混沌としながらどこまでも切迫感とリアリティに満ちたバンドサウンド。
「傾奇者のセンチメント」を楽曲として忠実に再現してみせた音源においてのみならず、NUMBER GIRLはライブバンドとしても、90年代末から解散まで圧巻の存在感を放ち続けていた。彼らのライブアルバム2作品『シブヤ ROCK TRANSFORMED状態』&『サッポロ OMOIDE IN MY HEAD状態』は、当時のNUMBER GIRLがステージで体現していた熱量と狂騒感を雄弁に物語っている。

「『中尾、田渕、イナザワ、向井』の四人で『ナンバーガール』である、という共通の意思が強いため『ナンバーガール解散』という決断に至りました」
2002年9月にオフィシャルサイト「狂う目」で発表された解散宣言は、メジャーでアルバム3作品を発表して、一般的に見れば「ここからさらに快進撃!」という状況下での、あまりに突然のものだった。
それだけに、NUMBER GIRLというバンドを、いや「日々是試練」のような運命共同体を続けていくことの厳しさ、そして他の誰にも代わることのできないメンバー4人のひとりひとりの意味を、この潔い解散発表は確かに伝えていた。

ご存知の通り、NUMBER GIRL解散後は4人それぞれに異なるキャリアを築き続けてきたし、再結成は――つまり4人がひとりも欠けることなく再びNUMBER GIRLとして集結することは不可能だろう、と正直思っていた。
当時NUMBER GIRLに魅せられたひとりであり、ライブハウスやフェスのみならず学園祭/テレビ収録/スタジオライブまでリアルタイムで彼らを追い続けていた自分は5年前、メジャー時代のアルバム3作品リマスター再発盤のライナーノーツ執筆のため、MATSURI STUDIOで向井にインタビューする機会に恵まれた。しかし、トータル5時間近くに及んだその酩酊取材の際も僕は「再結成の可能性」に関しては訊かなかった。あり得ないと思っていたからだ。

そんな4人が今年、再びNUMBER GIRLとしてステージに立つ。
再結成発表時の「またヤツらとナンバーガールをライジングでヤりてえ、と。あと、稼ぎてえ、とも考えた。俺は酔っぱらっていた」という向井感満載のコメントの陰に、4人のどれだけの想いが交錯していたのかを考えると、それだけで胸が熱くなる。今こそひとりでも多く、「あの音」の鋭さと爆発力を改めて体感してほしい。切に願う。(高橋智樹)
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