「人々がなくしてしまった“HAPPY”の感情を取り戻すため、シナリオアートが深海へ潜っていく」というコンセプトのワンマンツアー。そのため、「EX
THEATER ROPPONGI号が間もなく潜水を開始いたします」と告げる開演前の影アナ、MCなしで曲間には語りを挟む構成、曲中にドカーンと音がしてハプニングが起こる場面、……など、その世界にちなんだ工夫が至る所になされていた。

ここまでコンセプチュアルなライブは初の試みだが、そもそもシナリオアートは拭えない闇からもそれでも求めてしまう光からも目をそらさずに、まっすぐに伝えてきたバンドである。つまり、今回のコンセプト自体がバンドの本質と近いところにあったのだ。1曲ごとにクライマックスを迎えるかのように演奏に気持ちが入りまくっていたのは、だからこそだろう。

「今は弱っちいけど、もっと強くなってみんなに愛してもらえるように、助けられるように。そんな世界を描いていこうと思います」と語ったハヤシコウスケ（G・Vo・Programming）。新たな伝え方を見つけたシナリオアートの未来が一層楽しみになった。（蜂須賀ちなみ）