中田ヤスタカ“NANIMONO (feat. 米津玄師)”と『何者』について

中田ヤスタカ“NANIMONO (feat. 米津玄師)”と『何者』について

以前、10月15日に公開される映画『何者』の試写を観た直後に以下のブログを書いた。
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特に就職活動のようなシビアな現実の場面において「他者による自分への認証」は内定が「出る」or「出ない」といったデジタルな形で行われることが多い。
一方、「自分による自分の認証」は、TwitterやFacebookやinstagramなどのSNSのなかでわりとカジュアルにできてしまう自己演出/自己隠蔽/自己増殖のバイアスを受けながら、曖昧でアナログな形で行われることが多い。
だから現代において、特に本格的に社会に出る直前/直後の人々は、アナログな世界でデジタルに行われ、デジタルな世界でアナログに行われる「自己認証」のねじれにはまってしまう危険があるのかもしれない(しかも意外に知性や感受性が豊かな人ほど)。
『何者』では、そんなことが描かれているように感じる。

そして三浦大輔監督は、演劇で培った経験も感覚も総動員しながら、まさにデジタルとアナログが複雑にねじれた映画表現を発明して、『何者』の世界を描くことに見事に成功している。
そして主演の佐藤健をはじめ、出演者全員がそれぞれのキャラクター設定のなかでまさに体当たりでその「ねじれ」に巻き込まれながら演じているのも、もの凄い見応えだ。
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小説『何者』も映画『何者』も、そんな複雑だけど今を生きる人々にとって切実なテーマを、それぞれ文学、映画にしかできない高度な手法で描くことに成功している。

しかし本日リリースされた中田ヤスタカ『NANIMONO EP/何者(オリジナル・サウンドトラック)』にも収録されている主題歌“NANIMONO (feat. 米津玄師)”では、上記の複雑かつ切実なテーマが中田ヤスタカと米津玄師というふたつの巨大な才能の融合によって、極めてシンプルに、瞬間的に伝わるようなポップな形で表現されている。

文学/映画/音楽による奇跡的なコラボレーションが、この『何者』という物語を軸にして起きている。
多くの人に、いろいろな形で『何者』に触れてほしい。(古河)
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