メニュー

the HIATUSのメンバー自身によるサウンド・チェックの段階から、GRASS STAGEの空気がじりじりと熱を増していく。そして、ヴィジョンに「the HIATUS」の文字が浮かぶと、あたり一面に湧き起こる魂の大歓声! 細美武士が、ウエノコウジが、masasucksが、伊澤一葉が、柏倉隆史がオン・ステージ、張りつめた集中力と気迫が、衝撃波のような凄絶なアンサンブルとなってあふれ出した瞬間――観客で埋め尽くされた大平原は広大な音の銀河へと姿を変える。5人が放つ1つ1つの音が、そして細美の絶唱が、この会場を丸ごと包み込んでしまうくらいの破格のスケール感をもって広がり、僕らの身体と心を震わせてくる。the HIATUSがここGRASS STAGEに2年ぶりに立って、今なお極限進化を続けるそのサウンドスケープを展開してくれる。最高の風景だ。
細美が奏でるアコギのオーガニックな響きを精緻な音のタペストリーへと構築してみせる“Deerhounds”をはじめ、最新アルバム『A World Of Pandemonium』からの楽曲を軸に据えつつも、1stアルバム『Trash We'd Love』&2nd『ANOMALY』の楽曲も盛り込みながら、それらの楽曲越しにthe HIATUSの「今」を提示していくような、荘厳なまでに真摯なアクト。ひたちなかの夜空を熱く焦がしていくような“Insomnia”の熾烈な音像も、常に己の音と表現を研ぎ澄ませ続けている彼らだからこその強度とダイナミズムを兼ね備えているし、細美&masasucksのアコギが妖しくスリリングに絡み合う“The Tower and The Snake”はロックやバンドといった方法論すら超越したような透徹した美の世界を体現している。
そんな張りつめるような演奏とは裏腹に、「やべえ! すげえ楽しい! ありがとうございます!」と満場のオーディエンスに終始朗らかに語りかける細美の言葉からも、この日のステージへの手応えが窺える。「人生っていうのは『自分らしくいられるかどうか』に1から100までかかってる。最後の最後まで自分らしく生きてください!」……この日のステージで、細美はそう話していた。他の誰でもない/他のどこにもない表現を求めて自らをブラッシュアップし続けてきた彼の想いが、その言葉から、そして何よりその音楽からリアルに伝わってくる、感動的なアクトだった。ありがとうthe HIATUS!(高橋智樹)