ボブ・ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケット写真はなぜぶれているのか

ボブ・ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケット写真はなぜぶれているのか - 1966年作『ブロンド・オン・ブロンド』1966年作『ブロンド・オン・ブロンド』

1965年から66年にかけてのセッション音源をまとめた『ザ・カッティング・エッジ 1965-66(ブートレッグ・シリーズ第12集)』を11月18日(水)にリリースするボブ・ディランだが、名作『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケット写真を手がけた写真家が撮影当時のことを振り返っている。

今回の『ザ・カッティング・エッジ』はロック史に残る名盤としても名高い『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』、『追憶のハイウェイ61』、『ブロンド・オン・ブロンド』の3作のために行われたレコーディング・セッションの音源をまとめたもので、CD2枚組の通常盤のほか、6枚組のデラックス・エディション、18枚組のウルトラ・デラックス・エディションも用意され、ウルトラ盤についてはこの3枚についてのセッション音源がすべて収録されることになる。

今回のリリースに合わせて、この3枚のジャケット写真の撮影についてのミニ・ドキュメンタリー動画が公開されていて、今回、『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケットを撮影したジェリー・シャッツバーグのインタヴューが公開されている。

ジェリーはヴォーグ誌などのファッション・フォトグラファーとして活躍してきた写真家で、その後は映画製作にも乗り出し、アル・パチーノ主演の『哀しみの街かど』や『スケアクロウ』などの名作の監督も務め、カンヌ映画祭でパルム・ドールにも輝くことになった。ボブについては当時モデルとして活動していた後のボブの妻、サラ・ラウンズを通じて紹介され、一度スタジオでボブとフォト・セッションを行った後に『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケットを撮影するよう依頼を受けたという。なお、スタジオで撮影したものは『ブロンド・オン・ブロンド』のジャケットの中面で使われている。

このジャケットの写真が手振れでぼやけたものになっていることについて、ジェリーは次のように振り返っている。

「この時、外はかなり寒かったんだよ。評論家とかはみんなね、『ああ、これはドラッグのイメージを狙ったんだろう』っていってたんだけど、そうじゃないんだ。2月でボブはジャケットしか着ていなくて、ぼくも似たようなものしか羽織ってなくて、二人とも震え上がってたんだよ」

あまりの寒さに手元がぶれてしまったということだが、なぜその写真が採用されたのかというと「これはボブの手柄なんだけど、あの写真を選んだのはボブ自身なんだよ」とジェリーは説明している。

撮影場所はニューヨークのマンハッタン西南岸にある、ミートパッキング地区(食肉処理工場街)近辺だというが、今ひとつ場所ははっきりしないという。インタヴュアーを務めている、さまざまなアーティストのジャケット写真の撮影現場を探りあてる研究で知られるボブ・イーガンによれば、現場はその後再開発によって取り壊された可能性もあるそうだ。なお、今回の『ザ・カッティング・エッジ』のジャケット写真もこの時撮影されたもののひとつのはず。

イーガンはこれより前に公開された動画でも写真家のダニエル・クレイマーとともに『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』と『追憶のハイウェイ61』のジャケット写真の撮影現場を訪れ、当時を振り返っている。
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