FKAツイッグス『LP1』

FKAツイッグス『LP1』

FKAツイッグス
『LP1』


ロード、スカイ・フェレイラ、ロンドン・グラマー、ラナ・デル・レイ、そしてFKAツイッグス。
ここ最近の女性アーティスト(ロンドン・グラマーはバンドだが)の新作がどれもこれも異常なまでに素晴らしい。
しかもその内、ロードとスカイ・フェレイラとロンドン・グラマーとFKAツイッグスはデビュー・アルバムである。
どのアルバムも先鋭的な音楽性を打ち出し、歌詞には確固とした新たな世代の主張がある。
キャラクターやアイドル性に負うのではなく、しっかりと作品として注目を集め、セールス的にも大成功している(本作はまだ分からないが)。
エッジが立っていて、シーンの未来を切り開いていくパワーがある。
素晴らしい。

そんな中でも、一番ヤバいのはFKAツイッグスだろう。
先鋭的なR&Bサウンドに特化し、その特異なセクシュアリティーを強烈に放ちながら、性愛を告白し、人間の支配/被支配の関係を暴いていく。
内省的でナイーヴなインディーの恋愛観とも、ヒップホップ/R&Bの快楽主義とも違う、
支配されることで相手を支配する、性愛の絶対的な関係性をこのルックスで歌うのだ。
それは強烈である。

単純な構造を持たない、アブストラクトなトラック。
そして脈絡のない呟きのような歌の生々しさ。
彼女と聴き手がまさに「支配/被支配」の関係の中に囚われてしまう作りになっている。
百花繚乱の今のR&Bシーンの中で、「柔・硬」を自在に操れるR&Bというスタイルをここまで攻撃的なものとして展開している女性アーティストは他にはいない。



今、あらゆるジャンルがR&B化している。
インディーもメインストリームも、ロックバンドもテクノ/ハウスDJ達も、シンガーソングライターもラッパーも、誰もがR&Bの手法とフィーリングを作品に導入し、それによってR&B自体がさらなる進化/変化を遂げていく、という循環が起きている。
だが、彼女のような強烈な必然性のもとに、R&Bを「劇薬」として扱うアーティストは数少ない。
彼女のエクストリームなR&Bがどこまでポップフィールドに受け入れられるのか、非常に興味深い。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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