シドが好きだったボウイ

シドが好きだったボウイ

ご存知、77年1月に英リリースされたボウイの「ベルリン3部作」第一弾『Low』。

78年〜79年頃、筆者が一時居候していた北ロンドン、チョーク・ファームのパンク・スクウォットでもよく聴いたアルバムのひとつ。

当時このスクウォットの近くにはクラッシュの事務所兼リハ・スタジオ=リハーサル・リハーサルズがあったせいか、
ジョーやミックはもとより、シドやキース・レヴィン、スリッツの面々(ジョニー・ロットンもたまーに)などクラッシュ人脈がよく顔を出していた。

といっても、シャワーを浴びにきたり、誰かがキッチンでメシを作っているとついでに「自分で勝手に招待」パターンで食っていったりするのが目的だったんだと思いますが。

で、このスクウォットの「主」的人物が、
当時パンク専門の海賊ラジオのDJをしていたため、
「この家でかけても良いレコード、かけてはいけないレコード」がかなり厳しくコントロールされていて、
基本的に「パンク系以外」のアーティストの作品群はNG。
パンクの「天敵」だったヒッピー系やプログレ系だけではなく、
グラム・ロック系もブルーズも米西海岸系もほとんどがダメ。
早い話がパンク以外のバンドだと、せいぜいレゲエ系、それと「まぁ許せる」のはキンクスやストーンズ、ボブ・ディランあたり(それもヒッピー色がない時期のごく一部の作品)が限度だった。

筆者もある日「事もあろうにピンク・フロイドのレコードを持っている!」ことが発覚し、危うく追い出されそうになったことも。
今、考えるとあれは立派な思想ファシズムだよな、、、。

それはさておき、そんな厳しい状況の中、あのスクウォットでプレイすることが許されていた数少ないボウイのアルバムがこれ。

ブライアン・イーノによるジャーマン・ロックっぽい打ち込みプロダクションと、ギター・ロック独特のナマっぽい手触り感覚が絶妙にブレンドされていて、
ザ・キラーズ等の「80s打ち込みダンス・リヴァイヴァル」が最新トレンドになりつつある昨今聴いても、むちゃカッティング・エッジなアルバム。

PILが先陣を切ったあの「UKニュー・ウェイヴ」が勃発する2〜3年も前からこんな作品を作ってたボウイって、ほんとすげ〜〜〜。
今も聴くたびに感服してしまう。

あのスクウォットに遊びにきていたシドやキース・レヴィンも、これをかけながらよく大声で歌ったりしてたな、、、。

あれもこれも、今は良き思い出だけど。
そんなわけで、これは今も筆者が一番好きなボウイのアルバムです。
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