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    フランク・オーシャン、立て続けにリリースされた2枚の新作に寄せたメモ全訳

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    20日に雑誌「Boys Don’t Cry」を発売し、続けて新作『Blond』を突如リリースしたフランク・オーシャンが、雑誌「Boys Don’t Cry」の冒頭に掲載されたメモ書きを公開した。

    これは、新作『Blond』と雑誌「Boys Don’t Cry」ができるまでの経緯を綴ったもので、フランク・オーシャンのタンブラーにて公開された。

    メモ書きは以下の通り。

    2年前、小さな女の子が手で顔を覆っているイメージが沸いた。
    シートベルトはその子の胴体から首にわたって付けられ、ブロンドの髪の毛は、彼女の耳の後ろになびいていた。
    彼女の目は静かで澄んでいるけど、うつろじゃない。
    彼女の背後にある道も同じに見えた。
    僕はその娘のシートに座って、自分の頭で想像してみた。
    シートベルトが締め付けられると、僕は閉所恐怖感を覚え、前にもたれることさえできず、内臓が圧迫された。
    僕は前後にのけぞりシートベルトからのがれようと、もう一度くり返した。
    すると、僕は自由になった。

    どれほどの時間がこの車の中で過ぎたのだろうか。
    この車の中で死ぬ確率はどれくらいなのだろうか。
    僕はダッシュボードをノックした。(悪運を振り払うために)

    こんな風にしゃべるべきじゃない。

    僕たちはある街のなかで、車生活とスペースを引き換えに、あるいは楽しみのために化石燃料を食い尽くしている。けれども、その時間はベッドで過ごす時間と同じか、それより少し長いときもある。

    僕が始めてマジック・マッシュルームをやったとき、
    マネージャーはカリフォルニア工科大学の「トリップの日」から僕を救い出さなくてはならなかった。
    彼女の車に乗ったとき、彼女のポルシェのアルミニウムのセンターコンソールがマジで呼吸しているように見えた。喉かなにかみたいに。
    パサデナを離れてフリーウェイに乗って、少し話してから僕は視線をそらした。
    ホイールとタイヤを見ていたら、それが逆周りしているような錯覚を覚えたんだ。グーグルによると、僕の脳が全く違うものを想像していたかららしいんだけど。
    僕は、無数のウインカーが風に吹かれて揺れ動くのを見て、動けなかった。
    僕達はLAのダウンタウンを西に向かっていた。昔ガス欠にあったフリーウェイを走りながら。

    長生きの生き物に迎えられて、巨大なパーム木や植物のつるが肩を出して生きている。
    10番の出口のところで親近感がどんどん沸いてきた。

    僕は昔たくましいクロスオーバーSUVにのっていたんだ。
    タバコを吸って、リリース前の昔の自分のラフミックスとか、別の友達のiPhoneで聴きたい曲を聴きながら。
    数年後、数人のドライバーが入れ替わり、僕はもうあまり運転をしなくなった。
    これを書いている時点では、ロンドンに引っ越してから1年になるけれど、ロンドンで運転することは特になくなった。
    GT3RSを注文してからは、あまり走ってないけど、緊急事態のときには車は必要だね :)

    ラフ・シモンズは昔、僕が車に病み付きになっているのはありきたりだと言っていた。
    きっとそれは、ストレート(異性愛者)の男の子のファンタジーとリンクしているのかもしれない。
    意識のあるところでは、ストレート(直線)はいらない。少し曲がっているほうがいいくらいだ。

    このプロジェクトを編集するのはロマンティックでもあった。
    作業中は、古い使い捨てカメラを持って、1600万ドルのF1マクラーレンに乗っているような気分だった。
    雑誌中の僕の記憶は、近いようで気が遠くなるほどのすごく長いフライトのようでもあった。
    東京の郊外をRWBポルシェで走ったり。
    イギリス周辺でパーティーをやって、友達と作ったBMW4台でハイウェイを走り回ったり。ミシシッピの沼で水陸両用車で友達と遊んだり。
    セネガルのカンフー道場でモデルをスカウトしたり。実物大のおもちゃを意味もなく注文したり。
    天才タイロン・レボンとMVを撮影したり。
    メキシコのタラムで休みをとって星の移り変わりを楽しんだり。
    東京、ニューヨーク、マイアミ、LA、ロンドン、パリでレコーディングしたり。
    ベルリンでクラブ「ベルグハイン」をこの目で見たり。
    宝石を取引して多くの頭を持つブランドンaka LilBと会話しながら、例え話に浸ったり。
    真ん中くらいで僕の少年期を振り返った「ゴッドスピード」というストーリーを書いた。男の子は泣くんだよ。だけど僕は10代のほとんどの間、涙を流したことはないと思う。
    驚くことに、これが、これまでの自分の人生で一番好きなところだった。
    驚くことに、今の自分は、子供の頃に宇宙にお願いをしていた自分だということ。
    あの頃は、荒っぽい時期でもあったけど、バックミラー越しに見ると、あれで良かったって思えるほど、今は小さくなっている。
    でも本当に…あれで良かったって今でも思っているよ。

    これが「Boys Don't Cry」と「Blonde」だよ。全世界初だ。

    フランク・オーシャン、立て続けにリリースされた2枚の新作に寄せたメモ全訳
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