メニュー


ホーンセクションを含む総勢7名に及ぶバック・バンドを従えて登場した溝渕 文。全員による音出しに合わせて声を響かせて軽く喉を温めた後、歌い始めた1曲目は“here”。お客さんたちはゆっくり身体を揺らしつつ、表現力豊かな歌声に聴き入っていく。

開放的な手拍子を呼び起こした“key”の後、小休止。「みなさんありがとうございます。わたしは普段は香川で曲作りをしていまして、月に一度東京でライヴをしています。こんなシチュエーションでライヴをさせて頂くことが信じられません。通りすがりの人もいると思いますが、みなさんがわたしのお客さんだと思って歌わせて頂きます」と挨拶をして演奏再開。緩急豊かなバンドサウンドと一体となりながら歌声を多彩に変化させた“今日は夢も見ないで眠った”は、 彼女の歌の魅力を深く体感出来るひと時となった。

「あっという間でしたが、あと2曲です。ギターを弾きながら歌います。全然上手くありませんが、わたしは普段ギターで曲を作っているんです。ずっとギターを弾きながら歌いたいと思っていましたが、ついに実現します!」という言葉を添え、チェリーサンバースト色が綺麗なエレキギターを弾きながら歌ってくれたのは“マリー”と“坂本橋”。ギターを力強くストロークしたり、優しく爪弾いたりしつつ、歌声を自由自在に響かせた彼女は、実に気持ちよさそう。歌うこと、音楽を奏でることをあくまで自然に肉体化できてしまうアーティストであることが鮮やかに伝わってきた。

「本当にありがとうございました!」とお辞儀をしてステージ袖へと向かった溝渕 文を温かい拍手が見送る。初めて彼女のライヴを観たお客さんも多かったのかもしれないが、きっとその歌声に激しく惹きつけられたに違いない。(田中大)