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ゆったりとした川の流れをみつめるようなギター・サウンドから始まるのは“優しい川”。『THE ELEPHANT KASHIMASHI Ⅱ』からのナンバーによって2012年のROCK IN JAPANのステージをスタートさせ、のっけから振り絞るような歌声を轟かせる宮本浩次(Vo・G)である。そして彼自身もギターを携え、大きくカウントをとってトリプル・ギター編成で繰り出されるのは“悲しみの果て”だ。GRASS STAGEの規模に見合った、というかこの規模で鳴るべき、誰しもがちょっと耳にしただけで認めるような日本の「ロック」がここにある。踊るのもいい、飛び跳ねるのも一緒に歌うのもいい。でも、草原一面のオーディエンスの中には、もの凄い集中力を発揮して「聴き入っている」人も多く目につくのも、エレカシが他でもないロック・バンドだからである。そんな光景に投げ掛けられる、背中をどんと押すような歌“俺たちの明日”。どうだい、ロック・バンドっていうのは最高だろう。「エレファントカシマシです。イェー、エブリバディ。自慢の、弾き語りの曲、聴いてください。人生は素晴らしいね……よくわからないけど、素晴らしいであろうし、素晴らしいはずだと、そういう歌です」。宮本がそう告げてアコギを奏で、ひとり披露するのは新作『MASTERPIECE』からのナンバー“七色の虹の橋”。夏の一日のもっとも日差しが強い時間帯に、無数の人々が、宮本の弾き語りに聴き入っている。凄い光景だ。そして一転、待機していたメンバーと一緒に、真っ赤に明滅するステージの照明効果を背負って思うさま爆音とシャウトでぶち撒ける“我が祈り”。楽曲以外のところで、とりたてて言葉のやりとりがあるわけではない。笑いもない。でも、「歌を求める」「歌を歌う」という関係性の中に、とてつもなく濃密なコミュニケーションが生まれているのを、ここにいる全ての人が感じているはずだ。そして“今宵の月のように”を披露すると、サポートを含めてメンバー紹介してゆく宮本。キーボードには蔦谷好位置、ギターにミッキーことヒラマミキオという鉄壁の布陣だ。「総合司会、宮本です」というお馴染みの自己紹介を経て、ダイナミックに転がってゆく“so many people”へ、さらに「ROCK IN JAPANに来るのをとても楽しみにしていたよ、エブリバディ」と高らかに叫んでの“世界伝統のマスター馬鹿”と、畳み掛けてゆく。新作も過去の作品も関係ない、今に向けて鋭く突き刺さる言葉と詩情、声――それを歌と呼べ、と言わんばかりの姿勢だ。そして“ガストロンジャー”での沸騰ぶりは凄まじいものだった。冨永義之のドラム・プレイを「うるさい!」と制止し、オーディエンスを睨め付けるようにしながら尺を引き伸ばし、思いの丈をぶち撒けてゆく宮本である。最後に放たれた“ファイティングマン”まで、一種異様な、しかしこれこそがロック・バンドのパフォーマンスだという光景が生み出され続けたステージであった。(小池宏和)