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初日GRASS STAGEは13時を迎え、1日のうちで最も暑くなる時間帯に突入。オープニングSEにDRI-V(Dancer)とATSUSHI(Dancer)がオーディエンスのクラップを誘うステージに他のメンバーもスタンバイ。Kjのシャウト一閃からさっそく叫ぶようなシンガロングを巻き起こしてしまうナンバーは“AMBITIOUS”だ。ラウド・ロックとラテン・グルーヴの混成バンド・サウンドに挑発的なエレクトロニック・ビートも重なり、暑さを熱さで捩じ伏せんとする一撃を放つ。続いて、パーカッションを叩いていたBOTS(Turntable)が高速スクラッチングを響かせる“Posse in Noise”。やばい、これはアグレッシヴな流れだ。熱気をなだめるというよりも気付け薬のように、爆音を耳に身体に叩き込んでくれる。そして新曲“Run to the sun”へ。これも性急なナンバーだが、高らかに、強い意志を受け止めさせるメロディがコーラスとなって放たれ、Kjの「手を叩け!!」という言葉を合図に、フィールドのオーディエンスの頭上一面に手が打ち鳴らされている。なんとも胸熱な光景。「たぶんみんなよりも俺たちの方が、今日の日を楽しみにしていたと思うよ。日本人のミュージシャンであることを、1年で最も誇れる日だからね」とKjは語っていた。そののち、美しい旋律を奏でるギター・サウンドに、ゆったりと優しく、しかし少しずつ確かな熱を帯びてゆくKjの日本語ラップによるメッセージがたゆたう。7/4に配信シングルとしてリリースされた“Walk with Dreams”だ。更にはここでエレクトロニカが風を捕まえる“morrow”。とてもおもしろい選曲な上に、こんな暑い日にピッタリと嵌ってくれるようだ。Kjによるアコギのスパニッシュ風カッティングが踊るナンバー“Ivory”も配置され、《ひたちなかのフェスに》と歌詞を変えて届けられる。オーディエンスによる雄々しいコーラスを巻きながらタオル回しも敢行して“Crush the window”へと繋ぐのだった。これだけ多彩な、しかもいちいち無数のオーディエンスを乗っけて転がるシングル曲群が揃っているのは流石の貫禄である。「今日はバンドじゃない人も出てるし、俺たちも出さして貰っているけど、日本中のミュージシャンのほんの一握りでしかないわけで、ここに立っていることを誇りに思います。まだまだ他にも頑張っている人がいて、そういうミュージシャン、呼んでもいいですか?」とコール&レスポンスを巻き起こしながら響き渡るファットなブレイクビーツは……“Deep Impact”だ! フィーチャリング・ラッパ我リヤ! Qと山田マンが姿を見せ、それぞれのヴァースを切り出すところでも盛大な歓声を浴びながら、Kjとの3連砲マイクリレーが火を噴く。やっぱりすっげえ曲だこれ。畳み掛けるように「ミクスチャー・ロックは好きですか?」の合言葉から繰り出されるのは“Fantasista”。「そんな涼しい顔して終わっていいのかよ!? 今日、楽しみにして来たんだろ? イヤなこと一杯あるんだろ? 全部置いてけバカヤロー!!」と熱く挑発するKjである。完全に熱狂と興奮の坩堝と化したGRASS STAGE。最後にはKO-JI ZERO THREEとSATOSHIも呼び込まれ、2人がそれぞれにフリースタイルのラップで火に油を注いでからの“ROCK BAND”だ。美しい。Dragon Ashは今年4月、オリジナル・ベーシスト=IKUZONEの急逝という大きな悲しみを経験し(サポートで入っていたRIZEのKenKenもまた、実父でミュージシャンのジョニー吉長を6月に亡くしている)、例えようの無い喪失感を抱えてなお、彼らはジャンルを踏み越えて得られる連帯を、そして無限の力である音楽を、描き出してくれた。凄い。これがROCK IN JAPANのDragon Ashだ。今年も出演してくれて、本当にありがとう。(小池宏和)