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最初の一音が鳴った刹那、まるで非常事態宣言が発令されたように、一種異様なテンションが場内に張り詰める。“人間は自由なものとして生まれ、至る所で『鎖』に繋がれてゆく。”という長く意味深な名前を与えられた轟音が、陽光降り注ぐ穏やかなSEASIDE STAGEを、最前線の戦場さながらの緊迫感で塗りつぶしていくのだ。3日目のSEASIDE STAGE2番手のte’は、そのようにして、ヒートアップする一方のオーディエンスと共に絶頂の彼方へと一路駆け上がっていくのだった。
今年1月に加入した長身のベーシスト・matsudaは、足を蹴り上げ、ベースを振り回し、ダイナミックなパフォーマンスを見せる。ステージ最右翼のギター・hiroは、「イヤー! ジャパーン! イヤー!」と幾度もシャウト、手拍子を煽りに煽って、ギタリスト兼アジテイターとして気迫のステージング! その後方では、残響レーベルのオーナーでもあるkonoが、不敵な笑みを浮かべて不穏なギター・フレーズを奏で、ステージ最前列・左サイドに陣取ったドラムス・tachibanaは、時おり立ち上がって鬼神のようなドラミングを繰り出し、序盤で早くも勝ち誇ったようにガッツ・ポーズ! 思わず拳を突き上げずにはいられない、圧巻のパフォーマンスだ。
「聞いた話だと、このフェスはいちばん激しく熱いフェスらしいじゃないですか!? ものすごく期待してきました!」とMCでhiro。そして、「(着用のTシャツを指差して)これは、今年アーティストがもらえるやつです。で……」と、そのTシャツを脱いだ下には2009年度のTシャツが! 「2回分楽しみます、よろしく!!」と続け、大きな喝采を浴びて“『参弐零参壱壱壱弐伍壱九参壱伍九伍弐壱七伍伍伍四壱四壱六四』”“夢とは現実という平凡なものに付ける美しさに似た『嘘』の俗称。”など、間断なく楽曲を畳み掛ける。その衝撃波のような音像を浴びていると、あらゆる思考回路が分断されていくような恍惚感に満たされ、レポーターとして危機的状況に陥ってもしまうのだが……いや、正気を保って職務続行! 終盤も「ジャパーン!! 本気でいくぞーっ!!」とhiroがアジテートし、ラストの“死闘、勇鋭、死憤、励鈍、倖用、待命、陥陳、勇力、必死、冒刃。”ではギターを置いたhiroがハンドマイクでステージ最前列へ! オーディエンスは目いっぱいにコブシを突き上げて応戦し、いつの間にかcinema staffのギタリスト・辻がステージに乱入すると、狂騒的かつカオティックなクライマックスが出現! 「また来年も出たいなー! ジャパン最高っ!!」(hiro)と叫んで4人が去った後も、上気した熱がフィールドを満たしていた。(奥村明裕)