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彼女が、ポップ・ミュージックの表舞台に帰って来た。2012年いっぱいでソロ・アーティストとしての活動に終止符を打ったYUIが、yui名義でフロントに立つバンド=FLOWER FLOWERの登場である。これまで、シークレットでのライヴ出演など断片的な情報は伝わって来たものの、4月初頭に正式な活動開始と共に告知されたのが、今回のJAPAN JAM 2013出演のニュースであった。後々まで語られる、メモリアルなステージとなることは間違いない。とは言え、yuiとこれまでのJAPAN JAMとは必ずしも無縁ということはなく、昨年の開催では、彼女はなぜか向井秀徳アコースティック&エレクトリックの物販スタッフとして職務についていたという。つい昨日、向井秀徳アコエレ×曽我部恵一のセッションで昨年に引き続き披露された“CHE.R.RY”も、実に気の利いたトリビュートだったわけだ。


キーボードにmura☆jun、ドラムスにsacchan、ベースにmafumafuらバンド・メンバーと揃って位置に付き、暗がりの中で響き渡る幻想的なイントロ。そして、鮮烈なパンチ力とドライヴ感を備えたギターを掻き鳴らす金髪ショートのyuiが、運命に抗う強靭な意志の塊の如きヴォーカルを投げ掛けてくる。触れるものを一人残らず圧倒してしまうそのナンバーをビシッとフィニッシュすると、フロアからは絶叫ともつかない歓声が上がる。凄い。凄いバンドだ、FLOWER FLOWERは。

次の曲でも、バンドは高度なアンサンブルと美しく奥行きのあるサウンドで、激しいラヴ・ソングを支えている。yuiの歌の節回しからして、以前の彼女とは根本的に手応えが違う。その上で、バンドとしてのスタイルが既に高いレヴェルで完成されている。「こんばんは、FLOWER FLOWERです。よろしくお願いします」。シンプルにゆっくりと挨拶し、yuiはここでフロアに向かって深く頭を下げる。多くの言葉は要らない、とにかくこの音に、歌に触れて受け止めてくれといった印象だ。



この日演奏されたのは、すべて新曲で、イントロを除くと、全6曲。ノイジーでアーティスティックなサウンド・デザインと、yuiのエモーションとが、スタジオコーストに集まった無数の人々を呑み込んでいく。彼らは最後まで、控えめな照明の中で演奏を繰り広げていたけれど、去り際に改めて感謝の言葉を投げ掛け、手元の笛をいたずらにピーヒョロと吹いてみせたyuiは、確かに我々の知っている彼女でもあった。「今日は、出演させて頂いて、ありがとうございました……最後まで、素敵な演奏を、楽しんでいきましょう」。最終ナンバー、メンバーのmafumafuはチェロを奏でている。そのサウンドに身を任せるように、バンド・サウンドとともに変貌を遂げたyuiは、また新たな輝きを放っていた。「FLOWER FLOWERでした。ありがとうございました」。間違いない。2013年、この名前はポップ・ミュージック・シーンを震撼させるだろう。想像を遥かに上回る驚きと感動をもたらしてくれたステージだった。(小池宏和)




all pics by TEPPEI