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JAPAN JAM 2012最終日、2番目にステージに登場するのはTHE NOVEMBERS! dipのヤマジカズヒデとPlastic Treeの有村竜太朗をゲスト・アーティストに迎え、世代を超えたシューゲイザー/UKロック・ラヴァーが終結するという今日のライヴ、まずはフィードバックが渦巻くSEと共にTHE NOVEMBERSの4人だけでステージに登場。「JAPAN JAMへようこそ。THE NOVEMBERSです」という小林祐介の挨拶で始まったのは“再生の朝”。ベースの高松浩史はドラムの吉木諒祐と共にリズムを叩き、ギターのケンゴマツモトがキーボードを弾くこの曲は、大きな繭が少しずつ開いていくような感覚がある。少しずつステージ上の照明も明るさを増していく。そして、終盤、小林が踏み込んだディストーション。フィードバックが大きな渦を描いていく。残響を断ち切って始まった2曲目は“pilica”。これぞ80sUKギター・ロックという瑞々しいギターの旋律が印象的な楽曲だが、途中でプログレッシヴな展開を見せ、このバンドの現代的な実験性が明らかになる。そして、間髪入れずに始まった3曲目は“ニールの灰に”。THE NOVEMBERSの生むロックが、そのクールな佇まいとは別に巨大な激情を原動力としていることを改めて教えてくれる。強烈なディストーションのギター・リフで幕を開けた“dysphoria”ではストロボの閃光が場内を包み、“彼岸で散る青”ではTHE NOVEMBERSの構築美が炸裂する。ここまでほぼノンストップ。最初の挨拶を除いては一切のMCもなし。THE NOVEMBERSという漆黒の激情を叩き付けた格好だ。



そして、ここからが今日しか観られないTHE NOVEMBERSのステージである。「ここで一人目のゲストを紹介したいと思います。僕が尊敬するdipのヤマジカズヒデです」という紹介と共にヤマジがステージに迎え入れられる。客席からは「ヤマジ!」という声が飛ぶ。そうしてミドル・テンポのリズムと共に始まったのは、dipの“human flow”。6月にリリースされるdipのトリビュート・アルバム『dip tribute ~9faces~』でTHE NOVEMBERSが参加した楽曲になる。dipの楽曲の中でも決して派手な曲というわけではない。けれど、この曲を選んだところにTHE NOVEMBERSのdipへの深い愛情を感じる。幽玄なギターと共に小林祐介のヴォーカルはどんどんスケールを増していく。そして、dipの楽曲から2曲目として披露されたのは“オモト”。ここではヤマジ自らヴォーカルをとる。オルタナティヴなロックが日本でまだ確立されていない頃に生まれたdipの楽曲が、こうして今聴いても、その佇まいと新鮮さがまったく失われていないことに驚かされる。2コーラス目ではここでステージに登場したPlastic Treeの有村竜太朗がヴォーカルをとる。彼もdipを愛する一人だ。「ヌルっと出てきて、すいません。Plastic Treeでヴォーカルの有村竜太朗です」と曲が終わって、挨拶。そして「やりますか」という声と共に始まった楽曲に更に驚かされる。なんとマイブラの“only shallow”! アレンジはほぼ完コピといっていいもの。それをTHE NOVEMBERSとヤマジと有村が鳴らす。ヴォーカルをとるのは有村。とんでもなく貴重なものを観てることを実感しないではいられない。




この今夜限りの6人態勢のまま、THE NOVEMBERSの“Misstopia”にまで突入する。ヤマジは彼ならではのリリカルな旋律を弾きまくり、後半はほとんど有村がヴォーカルをとっている。小林が「僕の両側にカリスマがいる」と言っていたが、ゲスト・アーティストに自分の曲にも参加してもらうというのは感無量だったのではないか。THE NOVEMBERSの楽曲にヤマジと有村の色が追加されていく。この今日しか聴けない“Misstopia”の貴重さを改めて思う。小林の「俺だって終わりたくないよ」という言葉と共に始まった最後の曲は、Plastic Treeの“アンドロメタモルフォーゼ”。もちろん、引き続きの6人態勢である。意趣返しとばかりに、この曲では小林もヴォーカルをとる。計4本のギターに積み重ねられたディストーションの壁は、どこか神々しく、晴れやかさも纏い始める。ヤマジは最後までギターのネックをマイクスタンドにこすりつけて、フィードバック・ノイズを重ねていた。轟音に魅せられた者たちの奇跡の響宴だった。(古川琢也)


THE NOVEMBERS
ゲスト・アーティスト:有村竜太朗(Plastic Tree)、ヤマジカズヒデ(dip)

1. 再生の朝
2. pilica
3. ニールの灰に
4. dysphoria
5. 彼岸で散る青

with ヤマジカズヒデ(dip)
6. human flow

with ヤマジカズヒデ(dip)、有村竜太朗(Plastic Tree)
7. オモト
8. only shallow
9. Misstopia
10. アンドロメタモルフォーゼ