ゲスト・アーティスト：東京スカパラダイスオーケストラ
JAPAN JAM 2010、モビリタステージのラストを飾ってくれるのは、ロッキング・オンが企画するフェスの守り神とも言われているロックの御大、奥田民生！ タオルを振り回しながら登場し、まずは「寒～い」というジェスチャーに笑うお客さん。譜面をペラペラめくっている……ということは、民生のソロは「ひとり股旅」スタイルだということだ。ピックを探してキョロキョロし、また「寒～い」というジェスチャー。軽くギターのチューニング。「よろしくお願いします」とようやく声を出し、“荒野を行く”でのびやかな声を響きわたらせる。２曲目は「本日は呼んでいただいてありがとうございます。まずはひとりで前座的な曲を何曲かやらせていただきますので」と挨拶したあと、「俺もこれ久しぶりなんだよね」という“野ばら”。続く“コーヒー”では、「もう45（歳）だからということで」という歌詞のアレンジに拍手が起きる。しかし、アコギ１本で歌うというひとり股旅スタイルのライブは、「いい曲だなあ」「いい声だなあ」「歌、うまいなあ」という単純な感想しか浮かんでこない。自然に囲まれた透き通った空気の中で体験する「しみじみと素晴らしい曲だけの世界」は、フェスでしか味わえない贅沢な時間だ。
「それではここで、徐々に人が増えますんで」と、スカパラから茂木、川上、加藤、沖の４人が登場。「なんとなくホーンズが出ると思ったんじゃないの？」笑いながら民生もエレキギターに持ち替え、“イージュー★ライダー”スタート。スカ調にアレンジされた“イージュー★ライダー”はすごく新鮮で、楽曲自体がこれまでのフェスとは違った表情を見せる。終了後、ゲストの東京スカパラダイスオーケストラ全員を呼び込むかと思いきや、ニヤリと客席を振り返って、そのままピョコピョコステージを下りてしまう民生。スカパラの４人もいなくなり、客席からは「えーっ！」という驚きの声があがる。
客席に自然と沸き起こった「出てきて！」という呼び込みの拍手の中、SEとともに東京スカパラダイスオーケストラが登場！ まずは“STORM RIDER”を披露してくれた。「奥田民生さんのゲストですから。人数は多いですけど、ゲストですから(笑)。これからスカパラだけで何曲かやります。ちょっと涼しいけど、あったかくなってくれよ！」という谷中の掛け声で、楽園スカチューン“Call From Rio”がスタート。極太ホーンとグルーヴたっぷりのビートで、あっという間に会場をダンスホールに変えてしまう。続く“Just say yeah!”“スキャラバン”でも濃厚でしなやかな音がスカのリズムに乗って弾け飛ぶのだから、こちらはただただ踊らされるしかない。さすが、スカパラ。
民生「なんで俺だけちょっと前のやつ（スーツ）なの？ 知らないあいだに、みんな新しいやつ着て」
谷中「俺ら新調しましたから」
民生「マジかよ！ なんで新調すんだよ！ ゲストだろ？ 俺だけちょっと古いの……俺、上着だけ換えりゃよかったじゃん！」（※スカパラのスーツは上下黒、民生は上がグレーで下が黒だったので）
谷中「いやいやいや」
民生「まあ、この話は楽屋で」
というやりとりで笑わせたあとは、スカパラ得意のカバー曲、“Bridgeview”。民生はノリノリでギターを弾く。さらに、笠置シヅ子の“ジャングル・ブギ”ではいなたいリズムと「ウワォウワォ～」という迫力のフェイクに圧倒され、スカパラ×民生の“流星とバラード”では気持ちよすぎるグルーヴに唸らされた。
そしてラストはなんと、エディット・ピアフの“愛の讃歌”！ スカパラのライブではおなじみだが、今回は民生の歌つき。やっぱり贅沢すぎるよ、JAPAN JAM。軽快なスカのリズムと、ディナーショーっぽく胸を張りながら歌う民生のヴォーカルは最高にエモーショナルで、すごい歓声が巻き起こっていた。いやはや、百戦錬磨の実力者たちが見せてくれる本気のセッションは、音楽の底知れない楽しさに満ちたものでした。（上田智子）
奥田民生パート
1 荒野を行く
2 野ばら
3 コーヒー
4 イージュー★ライダー
東京スカパラダイスオーケストラパート
5 STORM RIDER
6 Call From Rio
7 Just say yeah!
8 スキャラバン
ジャムセッションパート
9 美しく燃える森 奥田民生／Vo.
10 Bridgeview 奥田民生／Gt
11 ジャングル・ブギ 奥田民生／Vo.
12 流星とバラード 奥田民生／Vo.
13 愛の讃歌 奥田民生／Vo.
