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「『COUNTDOWN JAPAN』、よろしく!」という軽い挨拶とともにMOON STAGEに現れた長澤知之。しかし彼の、悲鳴と絶叫が入り混じったような絶唱が響き渡った瞬間、さっきまでのFRONTIER BACKYARDとはまるで異なる、戦慄にも似た緊迫感と高揚感がフロアを一気に支配する。燃え盛る愛と衝動のロックンロール"神様がいるなら"。《生き残った心臓がゴミ溜めの中で星を見る》とギリギリの生存証明を歌う"EXISTAR"。張り裂けそうな想いと日常に負けそうな危機感を、喉も裂けんばかりの絶唱と悲しくも美しいファルセットに託し、幕張メッセの巨大な空間の隅々に届けとばかりに歌い広げてみせる"P.S.S.O.S."……ラウドなバンド・サウンドすらかき消す勢いで暴れ回る彼の歌声に、オーディエンスは雷に打たれたかのように、魔法にかかったかのように、ステージを凝視している。フォークの文学性とハード・ロックのエネルギーに抱えきれないほど狂おしい情熱と焦燥感を乗せて21世紀日本に炸裂させる異能の天才=長澤知之。彼の強烈な存在感が、このロック・フェスの祝祭感と眩い化学反応を起こしていく。バンド・メンバーが退場し、アコースティック・ギターを構えた長澤、「とりあえず、ここにいる人間に捧げます」と披露したのは、06年のデビュー・シングル曲"僕らの輝き"。聴く者すべての胸を突き上げるような壮絶な歌声でもって《僕らは1つの愛になる》と切々と歌い上げていく。その歌はどんな楽器の音色よりも鮮烈に、そしてどんなに情報量の多い映画や小説よりも圧倒的に豊潤な叙情性を湛えて胸に響く。続けて"僕らの輝き"のカップリング曲だった"三年間"を、あたかも街角のフォーク・シンガーのようにラフに歌い上げたところで、長澤のアクトは終了。たった5曲のステージながら、「本物」のヴァイブに満ちた歌を聴かせてくれた。(高橋智樹)