【コラム】BOOM BOOM SATELLITESが最後に鳴らしたのは「ロックンロールの永遠」だった――活動終了に寄せて

【コラム】BOOM BOOM SATELLITESが最後に鳴らしたのは「ロックンロールの永遠」だった――活動終了に寄せて

どれだけ電子音の爆風吹き荒れるハイブリッドなアレンジをまとっていても、テクノ/ハウスなどクラブミュージックのマナーや構造を濃密に内包していても、BOOM BOOM SATELLITESは一貫してロックンロールバンドであり続けてきた。いや、メカニカルな質感のサウンドテクスチャーが、弦の擦れる音や喉の震えといった生のリアリティとせめぎ合う、全身震撼必至の轟音アート――それ自体をロックンロールとして響かせる唯一無二のバンドだ、と言ったほうがより正確だろう。

BOOM BOOM SATELLITESは2016年6月22日(水)に、アルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』以来のフィジカル作品となる新作EP『LAY YOUR HANDS ON ME』をリリースする。そして、すでに中野雅之が公式ブログでアナウンスしている通り、今作をもってBOOM BOOM SATELLITESはその活動を終了する。

1997年の発症以来、川島道行の脳腫瘍の手術および療養で幾度も歩みを止めざるを得なかったその活動は、他のバンドに比べれば格段に困難を伴ったものだったことはご存知の通りだ。しかし、「この作品は4曲、約22分。祝祭と終焉、静けさ、そして新たな始まり。まるでこのバンドの生涯を22分で描ききったような壮大で美しい作品に仕上がったと思います」と中野がブログに記した通り、苦悩も葛藤もすべてろ過し尽くした無限のイマジネーションを繰り広げる表題曲“LAY YOUR HANDS ON ME”はもちろんのこと、“STARS AND CLOUDS”“FLARE”“NARCOSIS”に至るまで、今作『LAY YOUR HANDS ON ME』が描き出すフルアルバム級のスケール感に満ちた世界は、どこまでも眩しく、美しく澄み渡っている。

“LAY YOUR HANDS ON ME”Short Ver.

“LAY YOUR HANDS ON ME”の透徹したトランシーなサウンドスケープと《僕は沈みゆく太陽の中に消えてしまった/僕はまた君と会えるだろう、まだ立ち止まらない(訳詞)》というフレーズ。「現在、川島道行はミュージシャンとしての役割を終えて家族と共に穏やかな毎日を過ごしています」という中野のコメント。さらに。ミュージックビデオにフィーチャーされている川島の愛娘の笑顔……それらの要素が幾重にも織り重なった果てに、バンドの足跡を祝福する至上の福音の如き音風景が立ち昇ってきて、どうしようもなく心が震える。

「あともう一息でデビュー20周年というところでしたが音楽家、川島道行との旅もあともう少しで終わろうしています。川島くんと一緒に数え切れないほどの景色を見てきました。何を思い返しても簡単な事は無かった。思いのままジタバタして、もがいて、駆け抜けてきました。振り返るとどれも素晴らしく、誇らしく、思い出達はキラキラと輝いています」(前出ブログより)……新作リリースは途切れてしまうけれど、これからも僕はブンブンの音楽に触れるたびに――今までそうだったのとまったく同じように――魂を揺さぶられ続けていくだろうし、その音の向こう側にあるロックンロールの夢をずっと追いかけていく。僕らはブンブンの音楽とともに生き続ける。(高橋智樹)
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