音楽ソフトの収益の77%は全アーティストの1%が占有していることが明らかに

音楽ソフトの収益の77%は全アーティストの1%が占有していることが明らかに - ※写真はiTunes Storeより※写真はiTunes Storeより

音楽業界の実態を調査したあるコンサルタント会社の報告によると、現在の音楽ソフトからの収益の77パーセントは全アーティストの1パーセントの人たちの懐に入っていることが明らかになっているという。

報告は『ロングテール効果の死:音楽におけるスーパースター経済』というタイトルのもので、77パーセントの収益が1パーセントのアーティストに集中するという不均衡は昨今の音楽ソフト販売における技術革新によって一層わかりにくいものになっていると指摘している。2000年から2013年にかけて音源ソフトの収益は10億ドル(約1040億円)規模で減少を見せている一方で、収益におけるアーティストの占有率は10パーセントから17パーセントにまで増えているという。しかし、1パーセントへの集中の主な原因となっているのはユーザーの消費行動によるもので、デジタル音楽の革命によってニーズの少ない希少な作品がいくらでも揃えられる(ロングテール)状況が生み出されたにもかかわらず、消費者の行動は完全に供給過剰なものになっていて、豊かな商品構成にまるで対応できていないと報告書は指摘している。

さらに報告書は次のようにも指摘している。
「ロングテール理論はデジタル環境の中で消費者がコンテンツとどう向き合うのかを理解するうえでも有効なコンセプトとして期待され、デジタル・コンテンツ時代という新しい時代を紐解く指標になるものと思われていました。音楽へのアクセスが供給サイドもユーザー・サイドも容易になったことと、デジタル音楽カタログが膨大な内容を誇ることとが組み合わさって、圧倒的な人気を誇るアーティストの作品ばかりが売れていくスーパースター現象も弱まるはずだと見込まれていました。しかし、現実のマーケットが証明してみせたことは、人間はオフラインの時と同じようにオンラインでも羊飼いを必要とする羊の群れに過ぎないということです。

実際問題として、デジタル音楽サービスによってスーパースター現象は緩和されるどころか、ますます顕著になっています。たとえば、収益を独占している1パーセントのアーティストらはCD販売からの収益の総額の75パーセントを占めていて、さらにストリーミングなどの購読収益についても79パーセントを占めています。このすぐには呑み込めない事象は二つの原因によって引き起こされているとされています。一つにはデジタル・サービスにおけるトップ・ページ、特に携帯機器では表示スペースの問題で選択肢が少なくなってしまうこと、もう一つには消費者が過剰に多過ぎる選択肢に嫌気がさして発見の機会が却って少なくなってしまう、いわゆる選択による威圧現象が起きてしまうからです」

報告書ではデジタル革命によって、収益の格差はよりいっそう広がることになっただけだとしていて、その中でも最大の原因となっているのはストリーミング・サービス各社が膨大なアーティスト・カタログを揃えることを競い合っていることにあるという。過剰なカタログが準備されていくことは「消費者のデジタル音楽の経験そのものを損っているだけだ」と報告書は結論づけていて、収益分布の偏りを均していくには音楽作品の品揃えが絞られていく必要があるとしている。

特に似通った音の作品やカラオケなどが排除されていく必要があると報告書は指摘していて、ラジオがメディアとして中心的な役割を担ってきたのは、プレイリストが存在しているからで、デジタル音楽の分野でもプレイリストに匹敵する指標が必要とされていると説いている。
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