レディオヘッドのアプリ「PolyFauna」の開発スタッフが制作経緯を語る

レディオヘッドのアプリ「PolyFauna」の開発スタッフが制作経緯を語る

2011年の『ザ・キング・オブ・リムズ』に収録されている“Bloom”のセッションをベースにしたスマホ・アプリ「PolyFauna」を先頃公開したレディオヘッドだが、このソフトの開発者がバンドとのコラボレーションの経緯などを明らかにしている。

「PolyFauna」についてトム・ヨークは、「僕たちとユニヴァーサル・エヴリシングとの間で行った実験的コラボレーションで、『ザ・キング・オブ・リムス』のセッション、それも特に"Bloom"のイメージとサウンドを援用したものになっているんだ。これは初期的なコンピューターによる生命実験と僕たちの無意識下における想像上の生物などへの興味から生まれた試みなんだ」と説明していて、「あなたの端末の画面が、自ずと進化する世界への窓口となっているんだ。いろいろ見て回るためにも動き回ってみて。赤い点はどんどん追っかけて行くことができるから。ヘッドホンをつけてやることもできるんだよ」とソフトの使い方について語っている。

なお、実際のソフトを開発したユニヴァーサル・エヴリシングのマット・パイクは、開発に当たってレディオヘッドのほか、バンドやトム・ヨークの作品のアートワーク全般を手がけてきたスタンリー・ドンウッドと共に作業に当たったことを『NME』に語っている。

「何年か前にトム・ヨークからメールを貰ったことがあって、その中で普通のバンド・アプリとは違った、抽象的な音とヴィジュアルを駆使したアプリを作りたいと話を持ちかけられてたんだよ。僕はレディオヘッドの音楽はよく知ってたし、これまでもワープ・レコードのアーティスト(エイフェックス・ツイン、プレイド、ボーズ・オブ・カナダ)のジャケットやビデオを作ってきたからね。そこでまずはトムとスタンリー・ドンウッドとで、単なる音楽ビデオではなくて、空気感を持った世界を作りたいという話になって、『ザ・キング・オブ・リムズ』のセッションの世界を超アップに拡大して、なおかつエコーをかけまくったというサウンドを聴かせるヴァージョンにしてみたいという話になったんだ。すると、バンドがナイジェル・ゴドリッチとスタジオに入って、“Bloom”のセッションの音源をすべていったんバラしてそれをものすごく長いシークエンスで作り直していったんだよ。というわけで、この世界を移動しながら、聴覚的には知ってるはずのトラックなんだけど、でもやっぱり違う響きと記憶を経験するというものになって、部分部分は知ってるんだけど、すごく抽象的で摑みどころのない形でしか確認できないっていうものになったんだね。たとえば、インタラクティヴな世界を作り上げていく上で、いかにして直線的にならないようにするかって話し合って、音楽についてもいかにして直線的でなくしたくて、その辺もよく話し合ったんだ。どんな人でもこの世界を入ると、いつでも場面や自然やサウンドが違うまったく新しい旅に必ずなるんだよ。だから、隠された断片を無数に発見していくことになるんだよ」

実際のソフトでヴィジュアルを作り上げていく作業のプロセスについてマットは次のように振り返っている。

「スタンリーは題材を求めて外に出かけたりすると、ペンとインクとでスケッチブックに無数に絵を描いてくるんだよ。そこで僕たちはそういうスタンリーのアナログの絵をどうにかして、デジタルの世界に翻訳できないかと考えたんだね。幾何学的な構成もたくさん使ったんだけど、それは数学的なパターンと自然界に見出されるパターンには大きな共通点があるからやったことなんだ。つまり、樹木や珊瑚の成長の仕方、あるいは天気の変化、こうしたものは実質的には数学の公式に則っているようなものなんだよ。スタンリーが描こうと思う成長を似たような形で成長させるためにたくさんプログラミングを作って、ペンで描くよりはデジタルで形にしてみせたんだよ。そうやって作ったヴィジュアルをまたオックスフォードにあるレディオヘッドのスタジオに持っていって取り組んでみたんだ。

レディオヘッドはバンドとして、その音楽の作り方や音楽業界の揺るがし方の両面ですさまじく画期的なことをやってきていて、僕たちはそこにもすごく興味があったからね。実際のバンドはものすごく謙虚な人たちで、しかも、直線的なヴァース/コーラスというやり方とは違う、過激で興味深い作曲アプローチについてものすごく深い理解を持ってたね。たとえば、タブレットやiPhoneを音楽の新しいキャンヴァスとして利用することにものすごく興味を示してたし。だから、またアート・スクールに戻った感じだったな。バンドの取り組み方がどんなもので、今回の作業のプロセスがどういうものだったかを一番的確に表すとしたらそういう表現になるね」

さらに今回のアプリでも特に“Bloom”が題材として選ばれた理由についてマットは次のように説明している。
「打ち合わせで話し合っていたことの一つに、ものすごく極端な気候に見舞われてそれを引き金にして様々な感情を描きたいということがあったんだね。ものすごい雨のシークエンスとか、陽がぎらぎら照っている感じとかね。“Bloom”はそういう激しい天気や気候の振れを一番イメージとして喚起するトラックだったんだよ」

実際にこのソフトを使ってみるとどれくらいの種類のパターンと遭遇することになるのかという問いにマットは次のように答えている。
「打ち合わせの時にみんなで大きな地図も描いてみたんだけど、それは一つの大きな国で、いろんな自然環境や地形、気候、色が揃った国なんだよ。アプリを始める度にいつも違った場所から始まることになるから、アプリを使っている1人1人が全員、違った場所から最初は始めることになってるんだよ。その組み合わせの数はほとんど無限大なんだよね。

ちょっとゲームっぽい感覚も多少はあるんだけど、結果も何もないんだ。ゆるい、開けっ放しのものになっていて、終わりも目的もないものなんだよ」

(c) NME.COM / IPC Media 2014
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