ローリング・ストーンズの67年の薬物捜査はFBIとイギリス情報局MI5が仕組んだものだったとミック・ジャガーの新刊伝記が指摘

ローリング・ストーンズの67年の薬物捜査はFBIとイギリス情報局MI5が仕組んだものだったとミック・ジャガーの新刊伝記が指摘

ミック・ジャガーの半生を追った新しい伝記『Mick Jagger』は、ザ・ローリング・ストーンズに対する1967年の薬物関連の家宅捜査がイギリスの情報局のMI5とアメリカの連邦捜査局(FBI)によって仕組まれた囮捜査だったことを指摘している。

事件は1967年2月、キース・リチャーズのサセックス州レッドランズの自宅にミックと美術商のロバート・フレイザーが訪れていたところ、警察の急襲に遭ったというものだが、伝記で有名なフィリップ・ノーマンの筆による『Mick Jagger』によると、MI5とFBIはデイヴィッド・スナイダーマンという人物を薬物提供者としてバンドに接近させ、それを手掛かりに家宅捜査を行い、ストーンズのキャリアを潰してしまうことを目指していたとされている。

「レッドランズ家宅捜査事件は、ザ・ローリング・ストーンズのキャリアの息の根を早いうちに断ってしまうためにMI5とFBIとで練り上げた尋常ではない計画の一部だった」とノーマンの『Mick Jagger』は説明している。ノーマンによれば、ことの詳細を知ったのはロサンジェルスを拠点とするイギリス人の映画エージェント、マギー・アボットなる人物を通してとのことで、アボットは大成しなかった俳優のデイヴィッド・ジョヴからこの話を聞きつけたという。そのジョヴの本名がスナイダーマンで、ストーンズの面々には「アシッド(幻覚剤やLSD)・キング・デイヴ」として知られる人物だった。

そのスナイダーマンは1967年1月にヒースロー空港で薬物の持ち込みで逮捕されるが、税関の官吏はスナイダーマンをMI5と思われる「政府高官」のもとへ連行したといわれ、そこで検挙から免れる方法を教示されたという。

「それがザ・ローリング・ストーンズの懐に入り込み、ミック・ジャガーとキース・リチャーズに薬物を提供し、最終的にパクられるところまで追い込むことだった」とノーマンは本の中で説明している。

なお、このストーンズ壊滅作戦はアメリカにおける国家転覆の試みや不穏分子の跋扈を未然に防ぐFBIによる防諜活動作戦、COINTELPROのひとつとして行われたことで、60年代半ばの時点でストーンズはそこまで反逆的な存在として目されていたということらしい。

バンドはすでに"サティスファクション"や"一人ぼっちの世界"などの楽曲や数々のテレビ・パフォーマンスなどでその反逆的なイメージを強く打ち出し、早くからFBIに危険視されていて、その結果「ミック・ジャガーとキース・リチャーズを薬物不法所持で検挙するためにFBIはMI5に協力を要請した」という。それによって「ストーンズはアメリカ・ツアー用のヴィザ発行が拒否されるようになり、業界のトップ・アーティストとして活動していくには痛手なるだろう」とFBIは踏んでいたらしい。

ガサ入れの日にスナイダーマンはカリフォルニア製のLSDをアタッシュ・ケースに入れてレッドランズのキース邸に持ち込み、その数時間後、7台の警察車両がレッドランズに乗り付け警察がキース邸に踏み込むと家宅捜査が行われた。逮捕は見送られたが、ミック、キースとロバート・フレイザーはそれぞれに麻薬取締法違反に問われることになり、6月にミックとキースは実刑判決を受け、収監されたが直ちに控訴を起こして1日で保釈金により釈放された。

スナイダーマンは残りのLSDとともに事件の日のうちにアメリカへ戻ったというが、2004年9月にすい臓がんにより他界した。ミックとキースはその後、事件についてはそれぞれに仮釈放扱いと無罪となり、事件がバンドの活動を妨げることは結局なかった。

なお、ストーンズは新曲を2曲収録するベスト・アルバム『GRRR!』を11月にリリースすることを明らかにしていて、バンドの活動50周年を記念するリリースとなる。新曲は"Gloom and Doom"、"One Last Shot"といってどちらも先月パリでレコーディングされた音源で、2005年の『ア・ビガー・バン』以来のものとなる。『Mick Jagger』は10月4日にイギリスで刊行される。
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