ザ・フーのピート・タウンゼント、アップルを「デジタル・ヴァンパイア」のようだと語る

ザ・フーのピート・タウンゼント、アップルを「デジタル・ヴァンパイア」のようだと語る - 1996年作『ベスト・オブ・ピート・タウンゼント』1996年作『ベスト・オブ・ピート・タウンゼント』

アンダーグラウンドなロックやインディ・ロックなど、その時代に応じた最も新しい形のロックを広く世に紹介したことで知られるラジオDJジョン・ピールにちなんだ講演会をBBCが今年から主催しているが、その初代講師に指名されたザ・フーのピート・タウンゼントは、講演中アップルを「デジタル・ヴァンパイア」と言い表した。

講演会は10月31日にサルフォードで開催されたラジオ・フェスティヴァルの一環として行われたが、ピートはインターネットが「みんな知っているように著作権を破壊している」と語り、さらに新しい音楽の発展を妨げていると訴えたとBBCが伝えている。

また、アップルについてピートはこう語った。「アイチューンズがフェイスブックやツイッターなどといったインターネットの西部開拓地のような無法地帯で活動しているからといって、まるでデジタル・ヴァンパイアのように、あるいは国民の血税を公的資金として注入してもらって金融危機を乗り切ろうとする金融機関のように、法外で莫大な手数料をアーティストから巻き上げることなしに、どうしてそのサーヴィスの一部だけでも血を流して苦労しているアーティストに提供できないのか、そこにまっとうな理由が本当にあるのでしょうか」。

さらにピートはこう続けている。「アップルは死に体のレコード業界からタレント・スカウトを新人発掘のために20人招聘して雇用し、新しい才能のなかでも最高峰の者たちに経済的な支援とマーケティング的なサポートを提供するようなことをやるべきです」。

また、ピートはザ・フーの音源を対価を支払うことなしにダウンロードしたことのある人たちについて「そんな人はぼくの息子の自転車だってできるものならついでに盗んでしまうはずです。ぼくが作り出したものを無料で手に入れられて当然だという顔をしている人たちが本当にいるというのなら、ぼくとしては人間のモラルと社会正義とはどうなってしまったのだろうと、当惑せざるをえません」と批判した。

その一方で、ピートはどんな新しいアーティストもみんなそれぞれに自分の音楽をどう伝えていくのかということではディレンマを抱えているものだと説明し、クリエイティヴな人間というのは自分の作品が聴かれないくらいなら飢えて死ぬことも厭わないものだと語っている。

「クリエイティヴな人間というのは、自分の音楽がまったく無視されてしまうくらいなら、盗まれて楽しまれるのを望むものなのです。これがクリエイティヴな人間の抱えるディレンマなのです。無視されてもたっぷり食べられることよりは、飢えても自分の音楽を聴かれる方がいいのです」。

その一方でピートは自伝『Who He?』を仕上げているところだといわれている。ピートはこの自伝に15年以上取りかかってきていて、2003年に児童ポルノ・サイトにアクセスしていることが発覚し、警察に警告を受けた時にもサイトにアクセスしていたのはこの自伝のための取材や調査のためだったと説明していた。

自伝は2012年秋に大手出版社のハーパー・コリンズ社から刊行される予定だが、ピートはこの自伝の出版を自分にとっては「通過儀礼」のようなものだとたとえている。


(c) NME.COM / IPC Media 2011
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