アメリカ大統領のバラク・オバマは、ホワイト・ハウスでのパフォーマンスでボブ・ディランが自分に会って演奏することについて「信用ならないという様子だった」と明かしている。
これは今年2月にホワイト・ハウスで行われた60年代の公民権活動の指導者たちを称える特別ショーのことで、この時ボブは“時代は変わる”を演奏した。
オバマ大統領は、自分のためにパフォーマンスをするアーティストはたいてい個人的な挨拶を希望してくるものだが、ボブはあまりにも居心地が悪そうでそんな話にもならなかったとローリング・ストーン誌に語っている。
「ボブはリハーサルにも来なくてね。たいていこうしたアーティストは夜のセットが始まる前に練習をしておくものなんだけど。それとぼくとの写真を撮ろうともしない。普通はどのアーティストもぼくとミッシェルとの記念写真を撮りたくて仕方がないものなんだよね。でも、そのために姿を現す気配もなかったよ」
「ボブは姿を現すと、そのまま“時代は変わる”を演奏したんだ。これがまた素晴らしいバージョンでね。ボブはもうこの曲のすみずみまで生きているから、新しいアレンジを咄嗟に入れてしまうこともできて、するともう曲がまるで違う作品のようになるんだね。曲を終えるとステージを降りて、ぼくは最前列に座っていたんだけど、歩み寄ってきて握手をくれて、ちょっと首を傾げながら、微かな笑みを投げかけてくれて、立ち去っていった。それで終わりだよ。ボブは行ってしまったんだ。ボブとのやりとりというのは、それだけだったんだよ」
しかし、そんなボブの立ち振る舞いにオバマ大統領はひどく満足したこともつけ加えた。
「『やっぱり、ボブ・ディランはこうじゃなくっちゃ』ってぼくは思ったよ。一緒に写真撮って『チーズ』とか言ったり、ニコニコしたりとか、やっぱりそういう人とは違うだろっていうね。このショーそのものにちょっと疑念を向けるような、そんな人であってほしいんだよね」
その一方でオバマ大統領は自身のiPodにはNASやリル・ウェインなどといったアーティストの楽曲を入れていて、そのほかにはボブ・ディラン、スティーヴィー・ワンダー、ローリング・ストーンズ、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどが入っていることも明らかにした。
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