わずか2時間でネット上の著作権保護法案が英で可決

イギリス議会は賛否両論の法案であるデジタル経済法案を下院で可決し、成立させた。この法案が賛否両論なのは、ネット・ユーザーの利便性や知る権利が著しく損なわれかねない法律でもあるからだ。

与党労働党や左派寄りのイギリス自由民主党の間からも反対の声は出ていたが、土壇場で野党保守党の支持を取り付け、余裕の通過となり、テレグラフ紙によると189対47で可決した。

この法案は、たとえば、ネットでの著作権侵害へのプロバイダの対抗措置を強硬化させようというもの。そのための行政のネットへの対応も敏速化し、著作権侵害から自由な環境が整備されれば、きっとネットでの経済効果も今以上に上がるはずだというもの。

たとえば、イギリスには通信事業を監督するOFCOMという団体があるのだが、あるユーザーや複数のユーザーが度重なる著作権侵害をダウンロードなどの方法でネット上で行った場合、このOFCOMが強制的にこのユーザーらのアカウントをプロバイダに停止させる権限などが今回の法案では設定されている。

あるいは裁判所令によって、プロバイダにユーザーの特定のサイトへのアクセスを一切遮断させる権限の設定なども含まれていたのだが、これは審議の過程で法案から削除された。ただ、結局は、著作権侵害が少しでも想定されるような状況であれば、特定のサイトへのアクセスを国務長官令によって遮断することができるという内容になってしまった。

たとえば、日本では、利用料金の滞納以外の理由であるユーザーがアカウントを凍結させられたり、特定のサイトへのアクセスをブロックさせられたりすることは現在のところほとんどない(一部某大型掲示板ではアクセス規制などはよくあるが)。いずれにしても、どこか言論統制的な危険性をはらんだ法案であるのは確かなのでそれを危ぶむ声も多い。

もっと議論を尽くしていくべき法案であったにもかかわらず、総選挙に備えて議会が消化期間に入ってしまったため、4月12日の議会解散までに可能な限り法案を通過させてしまうというパターンのひとつになってしまい、審議にかけた時間もわずか2時間というお粗末なものだった。

ここ一週間の間に2万件を超す反対意見が議員たちには届いていたにもかかわらず、議会での議論がまったく片手落ちだったことに大きな批判が集まっている。


(c) NME.COM/IPC Media 2010
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