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    【考えてみた】ボカロP・kemuの“拝啓ドッペルゲンガー”はなぜこんなにも歌い手を駆り立てるのか

    【考えてみた】ボカロP・kemuの“拝啓ドッペルゲンガー”はなぜこんなにも歌い手を駆り立てるのか

    先日、ボカロP・kemuが4年ぶりに投稿した新曲“拝啓ドッペルゲンガー”。
    PENGUIN RESEARCHのベース・堀江晶太だったと明かしたことも含め、現在話題になっている。
    さらに、歌い手たちが続々と「歌ってみた」動画を投稿している。

    kemuは、2011年11月に“人生リセットボタン”をニコニコ動画に投稿。たちまち脚光を浴び、VOCALOID処女作にして、VOCALOID伝説入りを果たした。その後も投稿した曲全てがVOCALOID伝説入りするなど、人気ボカロPのひとりとなっている。
    また、サークル「KEMU VOXX」を立ち上げ、メジャーでアルバムもリリースしている。
    しかし、2013年5月に“敗北の少年”を投稿して以降、姿を見せなくなり、先日、4年ぶりに新曲を投稿した。
    なお、PENGUIN RESEARCHでは、堀江晶太としてベースを担当、作詞作曲も務めている。

    この度投稿された“拝啓ドッペルゲンガー”は、kemuの今まで投稿した曲の中でも特徴的といえる早いBPMと、ボーカロイドの高い声とはギャップがあるほどのヘヴィメタルのようなディストーションが強く効いたギター、重低音が響くベースやドラムによる構成になっている。さらに、4年という間があったためか、その特徴が爆発しているかのように、より早いBPMで、歌も収まりきらないくらいの歌詞の量で、ボーカロイドの特徴が十二分に活かされた曲となっており、さらに中毒性が煽られる曲となっている。

    拝啓ドッペルゲンガー 【KEMU VOXX】

    そして、この、人間が歌うには難しいだろう曲を、歌い手たちがこぞって「歌ってみた」動画として投稿している。
    今までのkemuの曲も多く歌われてきているが、同曲は現在、まふまふをはじめ、天月-あまつき-、そらる、うらたぬき×センラ・志麻&あほの坂田(浦島坂田船)、灯油など、人気歌い手たちが投稿、それぞれkemuへのリスペクトを込めて歌っている。
    その「歌ってみた」も各人の特徴が出ており、キーを調整していたり、同曲の台詞の部分を本当に話しているかのように歌ったり、それぞれで曲を解釈して、自分のものにして歌う技巧は、歌い手のポテンシャルの高さに感服せざるを得ないほどである。

    しかし、なぜここまで歌い手たちは、この難しい曲の「歌ってみた」動画を投稿するのか。

    同曲は先述したように、人間が歌うには難しいと感じる曲で、ボーカロイドだからこその特徴を活かし、人間的ではないからこそのエレクトロ感、良い意味で無機質な声と機械的な口調、そして早いBPMという、特徴が爆発した曲となっている。

    これを、歌い手たちが歌うのは、伝説と言われるボカロP・kemuへのリスペクトはもちろん、やはり挑戦心からではないだろうか。ボーカロイドというおよそ人間とはかけ離れた、しかし見た目は人間というアンドロイドでしか歌えないような曲は、自分が歌ってみたらどうなるだろう、歌ってみたい、という挑戦の欲求にかられるのではないのだろうかと思う。
    これまでも歌い手たちは色々な曲を投稿しているが、今回の“拝啓ドッペルゲンガー”は、それの最たるものなのだろう。

    さらに、歌詞はとても人間的という、アンバランスさがまた良いのである。この曲は、人間の欲求である「もう一人自分が居たら」ということが歌われているが、それをボーカロイド:GUMIが《「どうもこんにちは君の分身です」》と歌うと逆にリアリティもある。そしてそれを、歌い手:人間が歌うことで肉体性を帯び、また違ったアンバランスが生まれるのである。

    kemuが曲を投稿、歌い手たちの「歌ってみた」投稿ラッシュに、「この感じが懐かしい」と歌い手たちはツイッターなどで呟いていた。
    人気歌い手たちのモチベーションと、伝説のボカロPの相互の確立関係が改めて強固に証明されたといえ、ボカロPと歌い手界隈のさらなる盛り上がりを予感させる1曲だったと思う。(中川)

    拝啓ドッペルゲンガー/まふまふ【歌ってみた】

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