Dragon Ashが『Mステ』初登場で証明したロックのど真ん中の力

それこそ5年前、10年前、15年前にこの番組に出演していたとしても、驚きこそすれ誰も異議を唱えることはなかっただろう。それだけDragon Ashというバンドは、日本のロックシーンを名実ともにリードしてきた存在だったからだ。
が、彼らにとってはまさに今こそ、『ミュージックステーション』という場所に、ロックバンドとして/カウンターカルチャーとしての存在意義を旗幟鮮明に示す絶好のタイミングだった――ということだと思う。そして、その佇まいと激烈なサウンドこそが何より、彼らのマインドをダイレクトに伝えていた。

1997年のデビューから実に20年を経て、5月26日に初めて実現したDragon Ashの『Mステ』出演。
「光GENJI大好きだったんで。テレビの前にラジカセ置いて録音したりしてました。日本のど真ん中の人たちのパフォーマンスで、すごく刺激をもらいました」と『Mステ』の思い出を語る一方でKjは、コブクロ/亀と山P/AKB48/私立恵比寿中学といった他の出演者が居並ぶセットを指して「みんなみたいに真ん中ではやってないんですけどね。『ロックバンドもカッコいいんだ』っていうのを、ちょっとでもわかってもらえたら嬉しいです」と、一貫して自分たちは「ど真ん中=メインストリーム」とは異なる存在であることを表明していたのが印象的だった。

『Viva La Revolution』(1999年)が200万枚近くという破格のセールスを記録していた頃も、彼らはマーケットにおける規模感によってではなく、純粋にその音楽の突破力と、ライブシーンにおける信頼関係/共闘関係の力強さによってその存在を確立してきた。
メガセールスの時代が記憶の彼方へ消え去った今なお……いや今だからこそ、Dragon Ashは唯一無二のロックバンドとして時代を揺さぶるインパクトを発揮し得る――ということは、ミクスチャーロックの存在証明そのもののような“Mix It Up”の気迫の爆演で彼ら自身が体現してみせた通りだ。

情熱のままに叫び、歌い、拳を掲げ、クラウドサーフを繰り返す200人のファンに「いつも通り行こうや!」と呼びかけ、「『ミュージックステーション』だってカラオケじゃないぜ、生音で堂々と証明!」と歌詞をアレンジして、Kjはスタジオの熱気を天井知らずに煽ってみせる。
ハイエナジーな轟音の余韻の中、「ありがとう! 最高だった!」と満足げな表情でステージセットを去るKjらメンバーに、怒濤の大歓声が巻き起こっていく。日本全国の視聴者=オーディエンスを沸き立たせるには十分すぎる、最高のロックアクトだった。

演奏前に「(Dragon Ashが)バイブルです。小・中・高、今もそうですけど」(山下智久)、「カラオケ行くと『誰が先に歌うか』って取り合いみたいな感じでした」(亀梨和也)とDragon Ashへの想いを語る亀と山Pに「嬉しいです!」とテンション高く応えていたKj。
番組のエンディングでは「櫻井さん、AKBの劇場の時から、昔から観に行ってたんで。松田龍平と、新井浩文と、櫻井さんと3人で、『目が合った目が合った!』って騒いでたんで……」と暴露しつつ、「……対バンできてよかったと思います!」とあくまで「ライブバンド」としてのスタンスを貫いてみせた姿は、痛快なくらいに潔かった。

約2年前、地上波初パフォーマンスの場に『Mステ』を選んだKen Yokoyamaは、「若い子にバンドやってもらいたいなと思って」と語り、《I won't turn off my radio(オレはラジオを切らないよ)》と高らかにパンクロック闘争宣言を歌い上げていった。
そして今――「ど真ん中」とは一線を画した場所で、しかしいつだって「ど真ん中」の喉元を喰い破らんばかりのサウンドとバイタリティを研ぎ澄ませ続けていることを、Dragon Ashはゴールデンタイムの音楽番組という舞台で真っ向から示していた。それが何より嬉しかった。(高橋智樹)
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