ジェイムス・ブレイク、2/25東京公演を速報レポート

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昨年6月に新作『ザ・カラー・イン・エニシング』をリリースしたジェイムス・ブレイクが、昨日2月25日(土)に単独来日公演を行った。

RO69では、4年ぶりとなる単独来日ツアー、東京公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【ジェイムス・ブレイク @ 東京国際フォーラム ホールA】

昨年のフジロック以来のジェイムス・ブレイク日本公演。単独公演は4年ぶりである。僕が観るのはこれで5回目か6回目だが、間違いなく今回が過去最高の出来だった。歌も演奏も音響も映像も照明も演出も、すべてが完璧。その美しさに何度も息を呑み、深いエモーションに震えた。これほどのショウには何年に一度巡り会えるかどうか。

暗闇の中ぽっかりとステージがだけが浮かび上がるような演出。光と影の対照とグラデーションを巧みに使った、シンプルだがセンスのいいライティング・アート。会場の東京国際フォーラムは地響きするような重低音の威圧感こそもうひとつだったが、分離のいいクリアで硬質な電子音と対照的にゆったりと広がるエフェクト、優しく柔らかいが芯のある声がゆらゆらと揺らめくように空間を彩り、身体の奥に共鳴しながら深く響き渡って、ほとんど桃源郷のよう。強い音圧を感じながらも決して暴力的ではなく緻密で温かい音響は、やはり音が拡散する野外では求められない、屋内のホールならではの体験だった。和声を重視したミニマルなアレンジと不規則なリズム、最小限の音の出し入れで彩り豊かな色彩を出すバンドの演奏も素晴らしかったが、なんといってもジェイムスのヴォーカルの長足の進歩に腰を抜かした。静寂の中から立ち上がってくるソウルフルでゴスペル的な歌唱は、決して不安や孤独や恐怖ではなく、生きるエネルギーや喜びや生命の躍動を強く感じさせ、何度も聴いたはずの初期楽曲において一層深みを増していた。最新の電子音響と生身の人間の魂と声が立体的に交差し、機械と肉体が、過去と未来が緩やかに手を携え、美しく優雅で幻想的な光景を現出していたのである。

アントールドやビヨンセのジェイムス参加曲まで含む全19曲。“I Need a Forest Fire”のボン・イヴェールのパートはジェイムス自身が歌い上げる。本編最後の“Modern Soul”から“Retrograde”、そして元は父親の楽曲で、最初は好きではなかったことを明かし歌われた“The Wilhelm Scream”は、目映い光と映像と全身を揺らす音響がシンクロし完全に一体となった演出が恐ろしく感動的だった。アンコールのジョニ・ミッチェル“A Case of You”のカヴァーは彼がエルトン・ジョン以降の英国伝統のシンガー・ソングライターの末裔でもあることを確信させたし、最後の“Measurements”で、自身の声をルーパーで重ねながら、暗転した会場を静かに立ち去っていく終わり方まで、完璧だったのである。

本人は途中、客席の湧き方が足りないことに戸惑いがありそうだったが、それは集中して針の音が落ちる音をも聴き逃すまいとする生真面目で誠実な日本の観客の美点である。椅子席に慣れない若い観客が、最後に我慢しきれず立ち上がって盛大なスタンディング・オベーションを送る。僕も立ち上がって精一杯拍手を送った。最高のライブだった。(小野島大)

〈SETLIST〉
01. Always
02. Life Round Here
03. Choose Me
04. Timeless
05. Limit to Your Love(Feist cover)
06. Lindisfarne I
07. Lindisfarne II
08. Love Me in Whatever Way
09. My Willing Heart
10. Stop What You're Doing (James Blake Remix)(Untold cover)
11. Forward(Beyoncé cover)
12. I Need a Forest Fire
13. Voyeur
14. The Colour in Anything
15. Modern Soul
16. Retrograde
17. The Wilhelm Scream

En1. A Case of You(Joni Mitchell cover)
En2. Measurements
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