【コラム】Sexy Zone初のベスト盤を胸に「夢」と「衝撃」のアイドルとして生きてきた5人の5年を思う

【コラム】Sexy Zone初のベスト盤を胸に「夢」と「衝撃」のアイドルとして生きてきた5人の5年を思う

Sexy Zoneが今年デビュー5周年を迎え、初のベストアルバムとなる『Sexy Zone 5th Anniversary Best』をリリースした。デビューして5年、本当にあっという間だったような気もするし、いや、何だかいろいろあって、本当に長い歳月だったようにも思う。Sexy Zoneにまつわる記憶や時間の流れには、不思議とゴムのように伸縮する感覚がある。

2011年秋、Sexy Zoneのデビューはとにかく衝撃的だった。《時代を創ろう Sexy Zone》と歌われたデビュー曲“Sexy Zone”は、光GENJIの《しゃかりきコロンブス》(“パラダイス銀河”)ぐらい独特のジャニーズ文体で綴られたナンバーだったわけだが、なにしろ作曲はかの馬飼野康二というお墨付き。馬飼野渾身のジャニーズクラシックなメロディに乗せて、一輪の薔薇(!)を手にした平均年齢14.2歳の5人の美少年に、声変わり前の透き通ったファルセットのユニゾンでそう歌われた日には、「よし、時代を創ってくれ!!」と革命的昂揚に襲われて舞い上がったものだ。

本作のDISC1はデビューからのリリース順にコンパイルされた流れになっているが、本当に初期数曲の闇雲な無敵感は凄い。“Sexy Summerに雪が降る”なんて、今改めて歌詞を振り返ってみてもやはり迷宮入り必至の世界観なわけだが、その異次元こそがこの少年たちの棲まう場所であり、破格のアイドルである彼らが120%輝ける場所だと確信させるような魔力があるのだ。

そもそもSexy Zoneは、集められた5人の少年のフォーメーションからして衝撃であり、破格だった。Sexy Zoneのコンセプトは彼がいなければ成立しなかっただろうと思わせる生まれながらの0番、センターを宿命づけられた佐藤勝利。二次元的王子キャラを本能で演じきる稀代のパーフェクトアイドル中島健人と、ちょっと斜に構えたリアル男子の色気を醸し出す菊池風磨が見事なシンメトリーのコントラストを描き出す年長組。元宝塚スターを母に持ち、オートクチュールのようにジャニーズのエンターテインメントを自然に纏ったマリウス葉。そして歳に似合わぬプロ精神と天然少年の危うさのハイブリッドとして、未だ見ぬ可能性の塊だった松島聡。SMAPや嵐、海外でもワン・ダイレクションなどの例を挙げるまでもなく、5人という編成は男性アイドルグループのある種のゴールデンバランスなわけだが、Sexy Zoneが描く5角形もまた古の文書に記された記号のように神秘的で、「でなければならない」と信じられる説得力を持っていた。

東京国際フォーラムで開催された彼らのファーストコンサート(2012年)も衝撃だった。そろそろ「衝撃衝撃うるさいよ」と言われそうだが、彼らに関しては本当に衝撃の連打だったのだから仕方がない。十代半ばにしてすでにアイドルと、ジャニーズと、エンタテインメントの本質を完璧に理解しているとしか思えない5人が、「顔面偏差値東大級」と謳われたずば抜けたビジュアルの説得力と共に繰り出していく夢のような世界。ファンの少女たちの願望を片っ端から叶えていく少女漫画のようでもありながら、ティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』にも似た毒すらちらちら覗かせつつ異世界へと誘う様には「これは、後戻りできない」という微かな恐怖すら感じさせるものだったからだ。あの時、筆者はここに男性アイドルの「答え」があると感じた。ジャニーズアイドルの永遠、終着点があるとすればそれこそがSexy Zoneだろうと。

しかし、彼らは永遠でもなければ、終着点でもなかった。当たり前のことだが、Sexy Zoneは「始まった」ばかりのグループだった。そもそも当時の彼らは十代も半ば、人が最も変貌し成長を遂げる思春期のど真ん中にいたわけで、見るたびに背が伸び、いつの間にかグループ1の高身長になっていたマリウスを筆頭に、彼らの輪郭はみるみるシャープになり、瞳の輝きは時に憂いを垣間見せるようになった。こうして猛スピードで変貌していくSexy Zoneのあるべき姿、相応しいかたちを模索する時期が始まった。

2014年にはグループ再編成の呼び声と共に一時Sexy Zoneは佐藤、中島、菊池の3人での活動がメインとなり、松島、マリウスはそれぞれジャニーズJr.と新たなユニット「Sexy 松」、「Sexy Boyz」を始動させた。足し算も引き算も不可能に思えた5人のパーフェクションが揺らぐまさかの事態に、ファンが不安にかられた時期もあった。そう、本当に色々なことがあった5年間だったのだ。

ちなみに2015年には彼らは再び5人での活動へと回帰し、今に至っている。本作と共にそんな激動の5年間を改めて振り返ってみると、彼らのあの危うくフラジャイルだった不安定な日々も、成長期、思春期の真っただ中にある変わりゆく者たちを追う醍醐味であったと理解することができる。しかし同時に、このベストアルバムを聴くと、Sexy Zoneの5年前から微塵も動いていない本質にも気づかされるはずだ。

曲調はさすがに歳月を重ねるにつれて多用になってきている。3人活動期の“男 never give up”や“君にHITOMEBORE”あたりからウェルメイドなポップソングとしての余裕が生まれ、そのぶん低音から高音まで深みとレンジを増した彼らの歌声がより重層的に楽しめるナンバーが増えた。歌詞も初期のぶっとんだ異世界から、少しだけ下界に降りて私たちとコネクトするような、「街ですれ違うかもしれない」と思わせるような近さが生じている。でも、5年を経た今なおまったく変わらないものもある。それは、Sexy Zoneの歌には同時代性が皆無だということだ。

本作はたしかに彼らの移ろいやすい少年期のダイジェストでもある。しかし本作でSexy Zoneが象徴する少年には、たとえばInstagramでコミュニケーションの7割を済ませてしまうような「今どき」の若者感覚が恐ろしく希薄なのだ。90年代の渋谷のコギャルやチーマーの例を挙げるまでもなく、いつの時代も少年・少女は時々の流行や世相でカテゴライズされてきた。でも、Sexy Zoneがこの5年間で培ってきた少年像はたとえ昭和50年代でも通用しただろうし、逆に言えば30年後の世界でも今と同じくアイドルとして輝きうるはずだ。そういう普遍が、Sexy Zoneと彼らの歌にはあるのだ。

背が伸びて、声変わりして、Sexy Zoneはこの5年間で大きく変貌した。でも、彼らが至高のアイドルである理由は、今もってまったく変わっていない。少年から大人の男へのリアルなバトンリレーの傍らで、何時の時代にも夢のアイドルとしてそこにあり続ける、それがSexy Zoneだ。

DISC1がシングル曲をコンパイルしたいわゆる王道のベスト盤のトラックリストで、上記のようなアイドル=Sexy Zoneの本質にフォーカスした内容になっているのに対し、メンバーが自ら選曲したDISC2は、もう少しだけ普通の男子である彼らの本音が垣間見える内容になっている。特にラストの2曲、“With You”から3人曲を新たに5人で歌った“Congratulation(2016 Ver.)”への流れはグッとくる。“With You”は彼らがジャニーズJr.時代から歌ってきた原点的一曲だが、《見つけたんだ 小さな光 未来へ》と歌われる同ナンバーの一節は、彼らの5年間を追ってきたファンにとっては今再びの感慨と共に胸にこみ上げてくるものがあるだろうし、“Congratulations(2016 ver.)”の《流してきた汗 涙たちはきっと/無駄じゃないよ 心に しみこんで》という一節は、彼らの彼ら自身へのねぎらいであり、新たな5年、10年を前にした決意のメッセージのようにも聞こえる。コンサートでの演出も含めて、Sexy Zoneのリリシズムの結晶と呼ぶべき“Silver Moon”を彼らが選んでくれたのも個人的にとても嬉しい。

この『Sexy Zone 5th Anniversary Best』の通常盤のジャケット写真は、5人の表情や構図、衣装といったすべてがデビューシングル『Sexy Zone』のジャケット写真をトレースしたものになっている。5年前とまったく同じデザインだからこそ、驚くほど成長した今の5人の姿がさらに際立つという演出だ。ちなみに彼らの成長のメタファーは、CDの帯の細部にまでひっそり隠されていたりする。かつて“Sexy Zone”で《大人の決めたやり方/それが正解なの?》と歌った彼らを見守ってきたスタッフ、「大人」たちの愛を感じるアルバムであるという意味でも、二重に感慨深い5周年になっているのだ。(粉川しの)
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