「椎木は赤ちゃんだ」とずっと言われてきたMy Hair is Bad・椎木知仁が明かす「本当の椎木」とは

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女々しいとは思うっすね。けど――マジで女々しい奴ってもっと女々しいと思う。俺とかまだ大丈夫だなと思った

――アルバムが完成して。タイトルは?

「『woman’s』っていうタイトルにしました。次フルアルバム出すんだったら、男か女か、どっちかつけたいなと思ってて。一番ハマったのが『woman’s』だったというか」

――どんなアルバムにしたいと思っていました?

「今回は戦隊ものでいえば赤色みたいなアルバムにしたくて。主人公みたいな、そういうイメージで作りました。だから、全部シングルカットしてもいいぐらいの気持ち。前のCDを録り終わったあとに、うちの社長に『次は全部キラーチューンで頼むわ』みたいなこと言われて。そのつもりで頑張りますって言ったら、『そのつもりとかじゃなくてマジやで』って言われて」

――ははははは。

「『はい』って。だからそのつもりで書きました」

――歌詞については?

「何だろうな。やっぱり書くのが得意だなと思ったのが、女の子がいて、女性相手の曲で。メジャーデビューする前は『女の人の曲しか書けないよね、椎木くんは』とか言われたりしてたんですけど、いざメジャーデビューしてみて、いろんな人が聴いてくれるようになって。それこそback numberの清水(依与吏)さんとかが紹介してくれて。あの人に褒められるって、俺の中ですごいことなんですよ。何か認められた気がして。やっぱこれ俺、合ってたんだというか。だから俺の中のど真ん中ではあるんだと思います」

――赤裸々であるとか、生々しいとか、もっと言えば女々しいとか、椎木くんの歌詞は言われることが多いですよね。そう言われてどう思いますか?

「女々しいとは思うっすね。でも女々しいとは思うけど――マジで女々しい奴ってもっと女々しいと思う。俺とかまだ大丈夫だなと思ったっすね、最近」

――僕、マイヘアの曲を聴いて、生々しいなと思うことはあるんだけど、女々しいなと思ったことは1回もないんですね、実は。

「へえー」

――本当に女々しい奴はそれこそそんな歌詞になんかできないんだよ。

「マジでそうなんですよね。本当そう。でも、女々しい人が好きだったりするんですけどね、回り回って。ずるくなく女々しい人って、素直な感じがするじゃあないですか。俺、バンドマンとかだったらナチュラルにそういうことできてる人のことやっぱ羨ましいって思ったりするっすね」

――表現する上で?

「いや、っていうか生きてる上でというか。ナチュラルにはやっぱ敵わないなって思う瞬間が多いですね、最近は。自分もナチュラルなつもりはつもりなんですけど、こうでありたいみたいな部分がやっぱりあって、自分の中に。『My Hair is Badの椎木知仁はこうでありたい』みたいな部分もあるし。そこに近づいていきたいとも思ってるし。だから、そういうの全部抜きで本当にナチュラルに見える人がやっぱ羨ましい」


自分がすごく幸せだったり、楽に生活してたりすると、何か腐っちゃうような気がする

――つまり、そういう人間でありたいって思うっていうこと?

「や、何かね、何て言うんだろう。ただそのままいられる人になりたいなとはずっと思ってるっすね。何か本当その、パッとギャラもらったら1日ですっちゃう人みたいな。そういうことがナチュラルにできたりする人ってやっぱりかっこいいなってずっと思ってて。そういうふうになりたいなって思ってるんだと思う」

――そうなりたいけど、そうじゃない自分っていうのがいて。そこのギャップに囚われている感じがするんだ?

「そうなんです。だから書ける歌詞のほうが多かったりもして。でも突き抜けてる人を羨ましく思うし」

――それが椎木くんの唯一の情熱だよね、生きる上での。こうじゃないはずの現実をどうにかして歌にして燃やしたいっていう。

「そうなのかな。でも、このまま曲を書いていって、赤裸々に書いてあの曲よかったとか、失恋の曲を書いたりして、それでみんなにいいって言ってもらえるんだったら、どうするんだろうなと思って。俺自身が幸せにならないほうが、変なことがいっぱいあるほうが、My Hair is Badの椎木知仁としては喜ばしいことというか。じゃあ俺はいつ結婚したりすんだろう?って思ったりもしますね(笑)。いつも、バンドやってなかったらって思う。もう好き嫌い関係なく、今必要ないなと思っちゃって彼女とも別れちゃったし」

――必要ないって、音楽やる上でってこと?

「何かね、自分がすごく幸せだったり、楽に生活してたりすると、何か腐っちゃうような気がして。バンドマンとしてというか、曲書く人間として。だから途中でヤバいなと思って、方向転換しちゃう。何をこんな幸せにやってんだろうっていうふうに思っちゃう」


前の彼女に、「椎木は赤ちゃんだ」ってずっと言われてて、そんなはずないだろって思って。でも全然違う女の子にも同じ言葉で言われたんですよ。ゾッとした

――椎木くんの曲聴いてて、すごい特徴的だなって思うことがあって。未来とか、希望とか、夢とか、理想とか、そういうものに対してすごく警戒心とか恐怖に近いものを感じているというか。

「恐怖か……」

――手放しでそんなものを称えられないっていうかさ。必死に今にしがみついてるっていうか。

「ああ、その通りです。いつからこうなったんだろう。ずっとそうかな。今の歌ばっかり歌ってる。でも25、3年経ったら28とか。やっぱその時にしか歌えない歌を歌うべきだと思ってるんですよね」

――そしてもうひとつ、同じくらい、孤独とか孤立に対しても恐れを抱いている。常に誰かを求めるよね、椎木くんの書く歌詞は。だから恋愛のことを歌うし、特に元カノにこだわるのかな。

「ああー(笑)」

――わかって欲しい、受け入れて欲しい、褒めて欲しい、愛して欲しい。恋愛っていうのはある意味その投影装置みたいなものだよね。

「そうやって言われてみれば、ほとんどそうなのかもしれない」

――だから恋愛について書くときも、愛して欲しいっていうベクトルが多くなる。

「そうなのかも(笑)。前の彼女に、『椎木は赤ちゃんだ』ってずっと言われてて。そんなはずないだろって思って別れちゃったんですけど。でも全然違う女の子と遊んでた時に、その子にもまったく同じ言葉で『椎木は赤ちゃんだ』って言われたんですよ。ゾッとした。どこにそれが出てるんだろうと思って。それが愛して欲しいっていうことなんですかね。近くにいる人みんなに赤ちゃんだって言われる」

――カリスマではない、ヒーローではない、普通の俺がどこまでいけるのか。普通の俺が叫んでることをどんだけ聞いてもらえるのか、受け入れてもらえるのかっていう挑戦なんだと思う、椎木知仁にとっての音楽というのは。

「かな。俺の音楽か……何か変ですね。だってそれなりに俺、今ステージ上がっただけでワッてなるような人間になりたいとか言ってるくせに――書いてることはちっちゃな、本当六畳一間みたいな曲ばっかりですもんね」

――そう。で、それが世代的にも時代的にもリアルな感覚で、今の状況につながってきているのかもしれない。

「うん……やっぱり最近ようやくお客さんが――昨日も明日もソールドアウトだったり。そういう状況になって、これでいいんだって思えるタイミングが多くあって。すごいやりやすいというか。すごい楽しくなってきた」

――まっすぐつながるというか、視界がクリアになったって感じはしない?

「超いい、言い回しですね。『視界がクリア』。確かに。明瞭度高めな……それでお願いします」

――何だ、それでお願いしますって(笑)。

「それです。それだ」


テキスト=小川智宏

『ROCKIN'ON JAPAN』2016年10月号より一部抜粋
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