ボブ・ディランはこうしてノーベル文学賞受賞に至った

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ボブ・ディランが今年のノーベル文学賞に輝くことになった。発表は10月13日にノーベル文学賞の選考を執り行うスウェーデン王立学士院の会員で美学研究で知られるソーダトン大学教授のサラ・ダニアスによって行われ、「アメリカの輝かしい歌曲の伝統の中で、新しい詩的表現を生み出してきた」ことが評価されたと説明した。

今年の文学賞の候補にはケニアの作家のグギ・ワ・ジオンゴ、アメリカの作家のドン・デリーロ、村上春樹などが挙げられていたと推測されているが、イギリスの賭け屋のラドブルックスではボブのオッズは締切時に50倍から16倍へと人気が跳ね上がっていたとザ・ガーディアン紙は伝えている。
一説によると審査がもめ、それで例年よりも遅い発表になったというが、ダニアス教授は今回の決定で学士院が批判されるようなことにならないことを願っていると断り、ただ今回の決定についてはボブの楽曲タイトルをもじりながら「時代は変わるということなのでしょう」と述べてから次のように説明した。

「もちろん、ボブ・ディランは賞にふさわしい人ですし、それでこの賞を獲ったのです。英語文化の伝統の中でも偉大な詩人です。それと素晴らしい拝借人でもあって、実に独創的な拝借の仕方もするのです。そうやって英文の詩の伝統を体現している人物であって、54年間それを続けてきて、常に自分を作り変えていきながら新しいアイデンティティも作り出してきたのです」

さらにボブという歌手が受賞したことには驚く向きもあるかもしれないとしたうえで、「しかし、歴史を遡ってみれば(ギリシャ時代の)ホメロスやサッフォーのような人もいた」と断っている。

「ホメロスやサッフォーは朗読されて聴かれ、演じられるものとして詩を書いていたのです。それは多くの場合、楽器も伴うもので、そういう意味ではボブ・ディランと同じだったのです。わたしたちは今でもホメロスやサッフォーを読んでは、その詩の世界に楽しまされています。ボブ・ディランも同じで、彼の詩は読まれることも可能ですし、読まれるべきなのです。それにボブ・ディランは偉大な英語の伝統の中における偉大な詩人なのです」

ボブ・ディランは1941年にミネソタ州ダルースで生まれ、ロックンロールが勃発した1950年代半ばにギターを手に入れ、ロックンロールに熱中した。その後、カントリー・ブルースやフォークに傾倒し、詩人ディラン・トーマスにちなんでボブ・ディランと名乗って活動を始め、61年にニューヨークを目指した。ニューヨークのフォーク・シーンで頭角を現すと62年にファースト・アルバムをリリースし、セカンド『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』やサード『時代は変る』でフォークの旗手となるが、65年の『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』でフォークからエレクトリックへの転向を果たし、66年には傑作『ブロンド・オン・ブロンド』をリリース。その後も数年置きに方向性を大きく変えながら、75歳になった現在でもなお精力的にライブとリリースを続けている。その歌詞は時代や体制への糾弾に始まって、シュールな心象風景や関係性や朴訥な愛を歌ったものなどテーマやモチーフは多岐にわたり、おびただしいほどの情景と心象、そしてイメージを紡ぎ出してきている。

ダニウス教授はボブ・ディランの作品を聴いたことのない人に勧める作品として『ブロンド・オン・ブロンド』を挙げ、「ボブ・ディランの傑出した韻の踏み方や言葉の繰り返し方、思考の絵画性の素晴らしさをとんでもないくらいに集めた具体例となっているから」と説明した。なお、ダニウス教授自身は若かった頃はボブよりもデヴィッド・ボウイに没頭していたというが「世代的なものだと思いますし、今ではボブ・ディランは大好きなのです」と語った。

今回の受賞に対してオバマ大統領は次のようにツイートしている。

「ぼくの大好きな詩人のひとり、ボブ・ディランの、あまりにふさわしいノーベル賞受賞について祝福をお送りしたいです」

また、作家のスティーヴン・キングは泥仕合となっている大統領選をほのめかしながら次のようにツイートしている。

「ボブ・ディランがノーベル賞を受賞して最高に嬉しいよ。品のなさと悲しみにまみれたこの時期に起きたこととしては本当に偉大でいいことだよ」

なお、2007年のキャンペーン時に作成されたトレイラー映像はこちらから。
http://www.youtube.com/watch?v=be6ONrqyqGg
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