【コラム】何でこんなに愛されるのか? シンガー・Aimerの本当の魅力

【コラム】何でこんなに愛されるのか? シンガー・Aimerの本当の魅力

今年に入ってから短いスパンでリリースされたシングル曲では、澤野弘之との“ninelie”をはじめ、Taka(ONE OK ROCK)との“insane dream”、TK(凛として時雨)との“us”、野田洋次郎(RADWIMPS)との“蝶々結び”など、魅力的なコラボレーションが次々と実現し、その歌声と楽曲の完成度に一層の注目が集まっている女性シンガー・Aimer(エメ)。

その声は、一度耳にしたら頭から離れない独特の揺らぎと深みをまとっていて、甘さとハスキーさが奇跡的に共存しているところは忘れることができない。Aimerの声の魅力にインスピレーションを刺激された名だたるアーティストたちが提供した楽曲の数々は、各アーティストたちがAimerの声のどこに魅力を感じているのかが、それぞれに少しずつ違うことを表している。言い換えれば、それだけAimerの声は多面的な表情を持っているのである。Aimer自身は確固たる個性を放つディーヴァであると同時に、コラボレーションするアーティストたちを、これまで至ることのなかった新しい場所へと導く存在、つまりはミューズでもあるのだということ、これが、今回のAimerのニューアルバム『daydream』を聴いて強く感じたことである。
 
例えば、TakaはAimerに気高いロックシンガーとしての存在感を感じ取り、そこに自身のバンドでは表現し得なかった実験的なサウンドをぶつけることによる化学反応を楽しんでいる。一方で野田洋次郎は、繊細であたたかさをまとう歌詞やメロディが、彼女の声によって何倍も切なさを増幅させることを感じ取った。そして今回、このアルバムのために新たな制作陣として内澤崇仁(androp)とスキマスイッチが加わっていることも見逃せない。内澤の提供した“twoface”や“カタオモイ”などは、Aimerの乾いたクールネスが際立つ先鋭的なロックとして響き、スキマスイッチ提供の“Hƶ(ヘルツ)”は、まさしく、Aimerでなければ出すことのできない不思議なグルーヴを浮かび上がらせている。

すべてがAimerの声だからこその産物であり、それぞれのアーティストがAimerの声に出会ったからこそ生まれてきた楽曲ばかりなのである。このように、アルバム『daydream』は、Aimerという存在とそのアーティスト性に向き合ったミュージシャンたちの実験的なオムニバスという聴き方もできる。しかしその一方で、やはりAimerのシンガーとしての突出した表現力には心底恐れ入るのである。(杉浦美恵)
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