イギー・ポップ、自選したデヴィッド・ボウイの楽曲をBBCの放送で徹底解説:後半

イギー・ポップ、自選したデヴィッド・ボウイの楽曲をBBCの放送で徹底解説:後半

BBCのインターネット・ラジオ、BBC6で自身の番組「イギー・コンフィデンシャル」を持っているイギー・ポップ。7月29日に『ザ・ソングズ・オブ・デヴィッド・ボウイ』という特集を組んで、26曲デヴィッド・ボウイの楽曲を紹介し、旧知の仲だったデヴィッドや楽曲についての思い出や思い入れを番組司会として語った。

選曲はイギーによるもので「記憶からピックアップしようと思った。だから、紙とペンを用意して、それぞれの時代で気に入ってたものを思い出してみたんだよ。ただ、ものすごく有名な曲とかヒット曲とかは避けてみることにしたんだ。なんせ番組名が『コンフィデンシャル』(極秘事項)だからね」と説明した。それぞれの楽曲について後半13曲のイギーのコメントは次の通り。

“Sound And Vision”
「これ、すごいね。これはしばらく聴いてなかったんだ。結構、時間をかけて音楽がずっと積み重なっていって、そこで初めてヴォーカルが入るんだってことを忘れちゃってたよ。これはフランスでレコーディングしたもので、ホンキー・シャトーとか、シャトー・デルーヴィレって呼ばれてたところで録ったんだよ。当時の俺はたいがいデヴィッドと一緒につるんでて、当時俺が制作していた自分の作品(1977年の『ザ・イディオット』)はここでほとんどデヴィッドと作ってたもので、それも俺のバンドっていうことになってたんだよね。シャトーといってもたいしたところじゃなくて、絨毯商売で一山儲けた山師が建てたとか、その程度のものだったんだけど、それでもシャトーだからね(笑)。70年代のフランスだったから、屋敷の周辺で自転車に乗って1マイルも行くと農村とかがあるようなところだったんだ。みんなほっぺたとか真っ赤でさ、地元のバーとかに繰り出してて、ハエとかぶんぶん飛んでてね。ジャンボンとフロマージュのフランスパンのサンドイッチとかあってさ。こっちが有名人っぽくっても、まるで存在していないかのように接してくれるんだ。それがひとつの平穏になったんだよね。パリにまで行くにはどんなことがあっても最低でも2時間はかかるから、誘惑をすべてここで断ち切れるんだよ。すごくフランスっぽいところだったから、しっかり夕食を作っても、あんまり片付けないんだよね。翌日起きてくると、チーズとか、いろんなものが出しっぱなしで、それをつまんだりして最高だった。今みたいに衛生に神経質じゃなかったから。仕切り屋みたいな人もいなかったし、すぐ停電したりもしたけど、結構、いい作品をあそこでは制作したんだよね」

“Under Pressure”
「クイーンとデヴィッド・ボウイ、両巨頭ついに相見えるっていう感じだけど、これはデヴィッド・ボウイの曲にクイーンが客演してるっていってもいいように思うんだ。実際にそうなのかどうかはわからないけど、このリフにはデヴィッド印がどこもかしこにも押されまくってるからなんだよ(ブライアン・メイやロジャー・テイラーはこのベース・リフがジョン・ディーコンによるものだと主張しているが、ジョン・ディーコン自身はデヴィッドが思いついたものだと認めている)。俺の知ってるところでは、デヴィッドがクイーン側からなんか一緒にやらないかという打診を受けたということなんだ。全員がかなり長い間スイスに住んでいたことがきっかけになっていて、スイスってミュージシャンにとってはとても歓待を受けられる国なんだよ。俺も含めてね」

“Diamond Dogs”
「この曲はすごくファンキーな曲で、このアルバムが出た70年代初頭に俺が不法占拠してた家でこのアルバム・ジャケットを壁にたてかけていたのを憶えてるよ。ジャケット・アートはベルギーのアーティストによるエアブラシによるもので、ロック的な夢想を描いたものだったんだ。ギー・ペラートというアーティストだったんだけど。デヴィッド・ボウイが大型犬とのかけ合わせになっているっていう絵でね。それとこの曲ではロニー・ウッドがいかにもロニー・ウッドらしいギターを提供しているように思うんだよね」

“Criminal World”
これはアルバム『レッツ・ダンス』からの曲で、アルバムのプロデューサーはシックでの名声とその卓越したスキルで有名なナイル・ロジャーズ。アルバム自体がもうナイルのプロデューサーとしての捺印だらけになってるけど、かといってアーティストの邪魔をしてるわけでもないからね。音楽アーティストっていうのは時々、未発表の曲やまだ発表してない新作をほかのアーティストに聴かせることで楽しみたがることがあって、俺がこの曲を聴くことになったのはそういういきがかりからだったんだ。デヴィッドとその友達から声がかかって、ニューヨークのマンハッタンのチェルシーにある自分の部屋に来てくれっていうんだ。当時はまだチェルシーっていうのはところどころ普通の労働者世帯が残ってる一帯で、わりと普通な住宅街だったんだよね。そこで『レッツ・ダンス』の全体を聴かせてもらうことになって、みんなで床にあぐらをかいて聴いたんだよ。俺は“China Girl”なんかが収録されててもちろん興奮したけど、俺としてはこの曲が一番群を抜いてたんだよ。なんかもう存在感があって、すごくシンプルで、独特なヴァイブがあって、メッセージがあったからね。道徳性の問題も込められていて、ものすごくがっちりと組織として出来上がっちゃってるんだけど、あんまりいいことにはなっていない状況とは、どうしたらいいものかっていうね」

“Where Are We Now?”
「この曲は日中に歩き回ることを歌っているものなんだけど、これは人間の行動の中でも最も美しい行為のひとつだと思うよ。俺も日中の散歩はしょっちゅうやるし、たいていはひとりっきりでやるんだけど、たいがいなんかしら収穫があるんだ。だけど、エギゾチックとかそういうものとはまったく無縁なものなんだよ」

“I Can’t Give Everything Away”
「美しい曲だね。すべてを与えるわけにはいかないんだって歌う曲なんだけど、俺なんかは自分のものを全部処分したくなることが時々あるんだよね。でも、やろうとするといつもめちゃくちゃになるから、残念なことだよね」

“Stay (U.S. Single Edit)”
「この強烈な曲は単純にただ聴き耽るのが好きな曲で、カルロス・アロマーのギターのリフが最高にいいんだよね。実はドゥーワップでも同じタイトルの曲があって、これはモーリス・ウィリアムズ・アンド・ザ・ゾーディアックスによるもの。もちろん、デヴィッド・ボウイも知ってたはずだから、どっちも聴いてみるべき曲だよ。これからかけるのはデヴィッドのアメリカ盤シングル・ヴァージョンだよ。最後のリードを弾いてるのはアール・スリックだね。昔ながらのアメリカの実にいい音を聴かせるギタリストだよ」

“TVC15”
「『ステイション・トゥ・ステイション』からの楽曲で、アメリカの本格的なソウルとジャズ・ミュージシャンを揃えて演奏の大本をがっちり固めた演奏だよね。ソウルとかジャズ・ミュージシャンとかはみんな気持ちがオープンだから、そういう連中にとってはこういうのは普段やれないことを思いっきりやれる機会だったんだよね、きっと。普段みたいにアトランティックとか、スタックス/ヴォルトの名の通ったソウル・アーティストと一緒だったらやれるようなことじゃないから。こうした連中はちょっとしたフレーズを投げてもらっただけで、それを超絶的なものに作り変えられるし、この曲の部分部分ではまるでニューオリーンズ・スタイルのソウルみたいに仕上げてるんだよね」

“Young Americans (Single Version)”
「さらにソウルっぽくなるとこれになるかな。これはフィラデルフィアにあって、アメリカのソウル・ミュージックにとってすごく重要だったスティグマ・スタジオでやった曲だと思うんだけど。アメリカの若者(ヤング・アメリカン)へのニヒリスティックなアプローチが印象的な曲だね。あの子はヤング・アメリカンだからとか、そういう言い回しがさ。それとニクソン大統領への言及もあるよね。きみたちはきみたちのニクソン大統領(60年代末から70年代にかけてアメリカが公民権運動の過激化やヴェトナム反戦運動、学生運動とで荒れ狂った時代の大統領。CIAを使って政敵の盗聴を行っていたことが発覚した1974年のウォーターゲート事件で辞任に追い込まれた)を憶えてるのかいっていう。いやあね(笑)、あいつがホワイトハウス入りした時に虫唾が走ったのを俺はよく憶えてるよ。これはろくなことにならないだろうなってね。でもね、今俺がニクソン大統領と対峙したら、あの頃よりは優しく接しられるだろうな。俺自身もろくなもんじゃないってその後わかったから」

“Golden Years (Single Version)”
曲名紹介のみ

“Aladdin Sane”
「この自由なレコーディングは素晴らしいね。このピアノはマイク・ガーソン。なんかニューヨークっぽい感じの熱いやつでとにかく弾きまくるんだよね。しかも、このすごいソロの中にザ・チャンプスの“Tequila”のリフとかもぶちこんできてるんだよね。ちなみにほとんど知られてないことなんだけど、ザ・チャンプスの“Tequila”のあのとてつもないリズム・ギターは実は(その後カントリー・スターとなる)グレン・キャンベルが弾いてるってことなんだよね」

“Dollar Days”
「これは演奏が美しいし、いろんな展開が同時に進行してるよね。「ダラー・デイズ」っていうのはアメリカの日用雑貨店とかスーパーが特売の期間に特に使うキャッチフレーズで、東海岸に住んでたらまず耳にしないことはないんだよね」

“Warszawa”
曲名紹介のみ
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする