レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド、今はメタルにハマっていると語る

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  • レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド、今はメタルにハマっていると語る - レディオヘッド『ア・ムーン・シェイプト・プール』発売中

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レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドは新作『ア・ムーン・シェイプト・プール』について、楽曲があまりにもよかったのでアレンジャーとして臨むように心がけたと語っている。

アメリカの公共ラジオ放送局のNPRの取材に応えたジョニーは今度の新作についてのインタビューを受けているが、具体的に目指したいアプローチなどはあったのかという問いに次のように答えている。

「どの新作においてもいつも新しいレコーディングのテクニックとか新しいスタイルで臨む傾向が強いんだよ。できることならね。だから、すごく好奇心が刺激される時期でもあるんだよ」

ただ、そうした試みの結果はたいがい意図していたものとは違う意外な方向に転がるものだと語っていて、常にそうした予想外の展開との折り合いをどうつけるかが問題なのだとも説明している。

「どのレコードについても終わってみると、まるでこういうものになるとは思わなかったな、というところで全員の意見が一致するというか。なんか違ってきちゃったものをみんなで直しながら満足できるものにしていくっていう感じで。同じ内容の手紙を何度も何度も書き直していくような感じなんだよ。だから、すごくモティヴェーションをかきたてられる行程ではあるんだよ。その一方で、ものすごくうんざりしてくるところもあるんだけどね。見方によるけど、そうやってるおかげでいつも前に進んでいられるんだよ」

具体的に制作前にそういう話し合いはするのか、たとえば今度の新作の場合、そういう方向性の話し合いはしたのかという問いにジョニーは次のように答えている。

「したね。なにをしたかというと、たとえば前回のレコード、つまり『キング・オブ・リムス』では楽器を放棄して、ソフトウェアとかコンピューターを使って作品制作を進めたんだよ。だから、今度の新作ではその反動として、真逆のことをやってみることにしたんだ。それで今度は磁気テープを回すことにして、いろいろ限界も設けたわけだよ。たとえば、8トラック、16トラック以上のチャンネルは使わないことにして、作業をその枠内に収めるっていう。だから、やれることがこれまでと比較してかなり限られたところもあったんだけど、逆にそれがクリエイティヴィティをかきたてたような感じだったんだよ」

「でも、それと同時にしっかりコンピューターやラップトップも使うようにしたし、大レトロ体験みたいなものにはならないようにしたんだ」

たとえば、“Burn The Witch”の冒頭のようなストリングスを独特な音色で捉える試みについては次のように振り返っている。

「この曲についてはずっと未完のままになっていた曲にまた手をつける理由ができたというなかなかない機会だったから、いきなり出だしからストリングスを使ってみることができたんだよ。通常だったらストリングスというのは後から思いつくもので、終盤にかけて使う装飾なんだよね。ぼくはずっと何年間もいってきたんだよ、『いきなりストリングスから入ったら、すごくない?』ってね。この曲のもとの音源はトムがドラム・マシーンに合わせて歌っているだけのもので、ほかには一切音がなかったんだよ。その音源にぼくがストリングスを書いたんだね。実はこのオーケストラは全員ヴァイオリンをギター・ピックで弾いてるんだよ。そのオーケストラがリズムを刻んでいるのを冒頭から聴けるわけなんだね」

その一方でNPRのボブ・ボイレンがジョニーは想定している音が実際に頭のなかで鳴って聴こえてくるタイプなのかと訊くと「うん、聴こえるよ。コードとかハーモニーまでは聴こえるわけじゃないんだけど、メロディは聴こえるよ。あれこれ前後しながらでも聴き取れるよ」と説明している。

また、今作の作業を通して、自分たちは楽曲を最もいい形にしていくアレンジャーという意識を一番強くしたと次のように語っている。

「ぼくたちは自分のことを曲のアレンジャーとして考えてると思うんだ。たとえば、トムが曲を書いたり、半分くらい曲が仕上がってきたりすると、そこからすごいプレッシャーになってくる。そこからどうやって曲の魅力を損なうことなくアレンジして仕上げるかって。だから、アルバムで自分がどういう楽器を弾きたいのか、あるいはどんな演奏をしたいのかとか、そういう個人的な欲求は全然ないんだよね。むしろその曲で自分たちをどれだけ活かせるかっていう話なんだ。たとえば、映画の『バディ・ホリー・ストーリー』で、バンドがスタジオに入ると、プロデューサーがつっかかってきて、アレンジも誰がなにを弾くのかも自分が全部決めるっていってくるんだけど、ある意味、ぼくたちは全員があのプロデューサーみたいなんだよ。今ここで自分がギターを弾きたいとか、そういうことは優先させないってことなんだ。どうすれば一番いい結果が浮かび上がるかっていう問題で、本当にいい曲をだめにすることなくっていうことを考えるんだ。特に悩ましいのがトムがピアノで“Pyramid Song”みたいな曲を弾き出すような時で、これをレコーディングして、どうすればこれを損なうことなくできるのかってことなんだ。トムがひとりで弾いて歌っているだけでもかなりいい作品なのに、それをさらによくできるのかっていうことなんだよ。だから、実際のところ、ぼくたちはアレンジャーなんだよ」

あるいは“Daydreaming”のヴォーカルについては、バンド演奏をあらかじめ作るという、バンドとしてもあまりやらない手法を取ったと説明している。

「この曲はちょっと変わった例で、ぼくたちでバッキング・トラックを作ってから、トムがスタジオに入って、歌入れをしたっていう感じで。そこからまたいろいろ調整したところもあったけど、トム抜きのヴァージョンをあらかじめ作ったというものだったんだ。もともとトムが書いた曲だったんだけど、ぼくがピアノを弾いてバッキング・トラックをいったん先に作ったんだよ。いつもとはやり方を変えて、トムにはいい気分転換になったかなと思うんだけど。聴き返してみると、ちょっとタイミングがずれてる音もあるんだけど、だからってそれを消してやり直ししたところで、もう二度と同じようにはできないかもしれないからそれでいくっていうね」

また、作品を作る度にその結果に驚かされるとジョニーが語ったことについて、今回どういうところに驚かされたのかという問いには次のように答えている。

「いくつかあったんだけど、全体でいうと奇跡のようだったと思うんだ。こういうと自画自賛みたいになっちゃうけど、ひとつひとつの曲が本当にきれいに出来上がっていったことに本当に驚かされたんだ。もちろんひとつやふたつくらい、不満の残っている曲はあるけど、軸となる8曲や9曲がこれほどうまく作れたことに較べれば、そんなことはもうなんでもないと思うよ。そうした楽曲をひとつのアルバムとしてまとめられて、本当に満足してるんだ」

制作期間については「8割方のレコーディングは2週間で終った」とジョニーは振り返っていて、今後の方向性については「次のアルバムを作る頃には今度のやり方にも不満を覚えるだろうし、それでまた違った方向性を探ることになるんだと思うよ」と語っている。さらに個人的に今はヘヴィ・メタルに手を出しているとジョニーは明かしていて、それが次の方向性になる可能性もあると語っている。

「ヘヴィ・メタルっていうのもひとつの可能性かも。実際、ぼくね、ヘヴィ・メタルに今はまってるんだよ。なんかこれまでずっとヘヴィ・メタルのよさがちゃんとわからないままになっていたと思うんだ。だから、いろんな人にヘヴィ・メタルのお勧めとか訊き回って聴いてるんだよ。数週間前にもイタリアでディープ・パープルを観てきたけど、すごくよかった。ぼくにはすべてが新しいものだったから、おもしろかったよ。いかにもハード・ロックな佇まいのドラマーのイアン・ピアスとか、レッド・ツェッペリンとかね。そういうのはちゃんと聴いてるんだけど、その後はどういう人たちがいたのっていうね」

なお、取材の最後にジョニーがボブ・ボイレンにもお勧めのメタル・バンドを訊いたところ、ボイレンはスワンズなら好きかもしれないと提案。ただ、ボイレンが重層的な爆音バンドなのだと説明すると、ジョニーは「それって日本のバンドだよね?」と返して「トムにさんざん聴かされたんだよ」と明かしてみせたが、どうやらトムがお気に入りのBORISと勘違いしたらしい。
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