アヴィーチー、ライブ引退の原因はこれ? スーパースターDJの過酷な日常

アヴィーチー、ライブ引退の原因はこれ? スーパースターDJの過酷な日常

現在行っているツアーでライブ活動から引退することを表明しているアヴィーチー。自身はフェイスブックで発表した声明で自分の本当の人生を生きたいからと説明していたが、DJのツアー事情に潜む過酷な状態が遠因にもなっているはずだとザ・ガーディアン紙が指摘している。

ツアーというのはミュージシャンからは切り離せない活動となっているが、DJとしても活動するモービーはツアーという生活にどっぷり浸かっていると、間違いなく不安と鬱と不眠に悩まされることになるとザ・ガーディアン紙に説明していて、そうした自分の悲惨な状態から目を背けることがさらなる悲劇を招くことにもなると語っている。

「自分はそうじゃないと強がるから、これほどたくさんのツアー・ミュージシャンがアルコール依存症や薬物中毒に陥ってやがては死んでいくんだよ。ツアーをやっている人たちの死亡率を見ればわかることだけど、これはとても危険な職業なんだ。みんな若いうちに死んでいくんだよ」

たとえば、カリフォルニア大学統計学部が行ったミュージシャンの死亡時年齢などの調査によれば、音楽の14ジャンルのうち、ロックを抜いてエレクトロニックやダンス・ミュージックのアーティストの死亡率は5位となっていて、これはDJの場合には身一つで移動できるため、ツアー・スケジュールが際限なく組まれてしまうことも関係しているという。2007年以来、毎年200回以上のライブをこなしてきているスティーヴ・アオキは次のように説明する。

「通常、バンドとかはアルバムのリリースを中心にツアーのサイクルができてるけど、DJのツアーっていうのはもう果てがないから。俺たちはピンボールの玉みたいに世界中のあっちこっちに自由に打たれては跳ね返ってくるんだよ。最近じゃライヴの荷物だってヘッドホンとSDカードくらいのもんだしね。ものすごくモバイルな状況だから、どんどんと公演地と公演地の間の距離を遠くしていくのも可能になってくるんだよ。旅程のペースを制限するようなツアー・バスのようなものからDJというのは解放されてるんだ」

あるいはアバヴ・アンド・ビヨンドのトニー・マッギネスは次のように説明する。

「ほかの音楽ジャンルやカルチャーとDJの違いは、DJのツアーの速さにあるんだよ。DJではスケジューリングも完全に柔軟なもので、それはロックンロールでは絶対にありえないことなんだ」

さらにトニーは「しかも、出番はほぼ間違いなく真夜中すぎだから」不眠にも陥ることになると説明している。フロストラダムスのカート・カメルーチは次のように語る。

「DJのライブっていうのは終わると朝の3時、あるいはもっと遅いからね。それからホテルに戻って朝8時の便までに仮眠でも取ろうと思うんだけど、ライブで興奮しまくってるからなかなか気分が醒めてこないもんなんだよ」

それでなくてもDJの場合、バンド・メンバーなどもなく、マネージャーを抜かせば常に単独で行動していることになり、強烈な孤独感や疎外感に苛まれることになりやすいとイスラエル出身のダブステッブ・プロデューサーのボアゴアは説明するが、睡眠障害はこうした精神状態をさらに蝕むことになるとトニー・マッギネスは語る。

「ホテルの部屋で横になって寝ようとしてるのにいっこうに寝れないのはこの仕事のせいなんだってわかった時ほど自分が病んでいるのがはっきりしてくることはないんだ。頭の中のものすごい闇が相当長い間居座り続けるんだよ」

またライブでの興奮状態とそれに続く気分の激しい落ち込みとの折り合いをつけるのも難しいとカート・カメルーチは語る。

「人間らしい気分に戻るにはたいてい2、3日はかかるもんなんだ。でも、ライブから4日後にはたいがいもう次の公演に向かってるもんだからね」

こうした弊害を乗り越えるためにスティーヴ・アオキは瞑想を実践しているというし、カート・カメルーチやモービーはヨガなどを行っているという。また、スティーヴ・アオキは次のようにも説明する。

「それでなくてもツアーにはたくさん誘惑があって、結局まともになにもできなくなるのはこうした誘惑のせいなんだよ。そこでメンタルのバランスがやられちゃうんだね」

こうした事情を踏まえ、アーティストとしてはマネージャーらにスケジュールを過密に組まないように訴えるというが、DJとして声がかかるということは旬だということでもあるのでマネジメント側にも興行側にもなかなかことの深刻さをわかってもらえないとトニー・マッギネスは説明する。

それだけにアヴィーチーがツアーそのものをやめてしまうと発表した時には誇らしく思ったほどだという。

「大きなショックを受けたくらいで。もうやめるって決断したことがね。でも、この世界に関わってればよくわかることなんだよ。これは俺たち全員の問題なんだよ」
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