ローリング・ストーンズ楽曲使用の共和党大統領候補ドナルド・トランプにバンド側が公式声明

ローリング・ストーンズ楽曲使用の共和党大統領候補ドナルド・トランプにバンド側が公式声明

先週行われた共和党全国大会で正式に大統領選の共和党候補として指名を受けたドナルド・トランプだが、この指名党大会で使った音楽をめぐってクイーンやジョージ・ハリスン側だけでなく、ザ・ローリング・ストーンズからもまたしても不快感を表明されている。

ストーンズについては先にトランプの選挙キャンペーンで“Start Me Up”が使われていて、ストーンズ側は無断で音源が使用されたこと、トランプ候補への支持は一切していないことをこれまでにも表明している。

ただ、今回トランプ候補は演説のエンディングでストーンズの曲を使っていて、曲は“無情の世界”。原題は“You Can’t Always Get What You Want(いつもほしいものが手に入るとは限らない)”で、なぜこの曲をと疑問に思う人も多いかもしれない。考え方によっては、ヒラリー・クリントンへのあてつけとも考えられるが、音楽サイトの「Consequence of Sound」では、トランプ候補とストーンズが関わり合った1989年の事件についての洒落なのかもしれないと指摘している。

1989年になにがあったのかというと、この年はそれまでの解散の危機にあったともされるストーンズが復活し、スティール・ホイールズ・ツアーを敢行してツアーの興行成績を塗り替えたことで知られているが、この時、このツアーを手がけた興行プロモーターのマイケル・コールはケーブル・テレビでのペイパーヴュー放送での中継を発案し、最終的にトランプと関わることになったことを自身の講演で紹介している。

コールはボクシングなどのスポーツ興行を参考にしたといい、この公演はツアーとは別個の1回きりの企画として開催し、会場側は会場提供費をバンド側に支払い、入場料を受け取り、さらにバンド側は放送権料をすべて受け取るという取り決めで進めたという。バンドはこの企画を了承し、コールはラスヴェガスのカジノに売り込んだというが、当時まだラスヴェガスでロック・コンサートをやることはほとんどなく、誰も手を挙げなかったところ、唯一手を挙げたのがアトランタでホテルとカジノのリゾートを手がけているトランプだったという。

この話をバンドに持って帰るとコールは「ドナルド・トランプとは関わり合いたくないから。一切ね。このクソボケ」とどやされてしまったというが、コールはトランプを地元アトランタ向けの公演の宣伝以外の、全米展開のプロモーションなどからはすべて締め出し、実際のライブ会場にも足を運ばせないという条件を実現させてみせるとバンドに約束し、企画は進められた。

しかし、土壇場で大騒動が勃発し、それはトランプが取り決めを無視してストーンズがテレビ中継でこのライブについて記者会見を行う直前に自身の記者会見を強行し始めたのだ。トランプの記者会見場に駆けつけたコールはトランプを呼びつけ、こういう活動は一切しないこと、会場にも足を運ばないことを約束したはずだと責めるとトランプはマスコミからどうしてもと懇願されたのだと弁解し、くだらない言い訳はやめて一切中止しろと言い渡したが、その5分後にトランプはまた記者会見を再開させ、コールはその火消しに奔走したとか。

さらにまた記者会見をトランプが再開させるとしびれを切らしたキース・リチャーズが自身のナイフをコールの机に叩きつけ「俺があいつをクビにしてこないとできないのかよ」としっかり自分の仕事をしろと凄んできたという。コールはそのまま、トランプのもとへ行き、「おまえは今からすぐにこの建物から出て行き、ストーンズは午後6時40分から記者会見を開始する。それともおまえはここに残って、俺が記者会見を開いて今回の中継ライブが中止になった理由を説明する。そのふたつにひとつだよ。この建物がおまえのものなのはよくわかってるけど、おまえとマーラ・メイプルズ(当時のトランプの交際相手)はクビだ」と言い渡した。つまり、すべての権益を放棄するか、中止による損害賠償をすべて被るか、どちらかの選択を迫ったという。

にわかに動揺したトランプは「俺はマイク・タイソンの興行だってやってるんだぞ」と脅しをかけ、トレンチコートを着込んでメリケンサックを拳にはめた大柄の用心棒風の猛者が3人、関節を鳴らし始めたというが、コールが自身のセキュリティ・チーフに無線で応援を要請すると、すでにその現場近くにホッケーのスティックや鉄バールなどを担いだセキュリティー・スタッフ40名が控えていて、トランプ一行はすごすごと退散したという。

というわけで「いつもほしいものが手に入るとは限らない」とはこの時の経験のことを指しているのかもしれないが、ストーンズ側は今回の"無情の世界"の使用について次のようにツイートしている。

「ザ・ローリング・ストーンズはドナルド・トランプを支持していません。“無情の世界”はバンドの許可なしに使用されました」
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