【コラム】GLIM SPANKYは「闘い」の音楽だーー全身全霊を傾けてロックを撃ち放つその先にあるもの

【コラム】GLIM SPANKYは「闘い」の音楽だーー全身全霊を傾けてロックを撃ち放つその先にあるもの

《関係ない顔した ことなかれ主義の腑抜けが/陰でニヤニヤ 人のこと何を笑ってるんだ?/お前らさ 笑われるのは/湿った心は 最悪の燃えないゴミだぜ》

前世紀のパンクバンドの歌詞か?ってくらいに剥き出しの反骨精神に満ちたこのフレーズは、紛れもなく2016年の新曲、それも2016年7月23日公開の映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌として(しかも原作者=尾田栄一郎からの熱烈なラブコールを受けて)制作された、GLIM SPANKY“怒りをくれよ”の一節だ。

詞曲を手掛けた松尾レミは「“ワンピースと闘う気持ちで、主題歌を作ってください”というパンクな注文をワンピースサイドから頂き、この曲が出来ました」とコメントを寄せているが、《怒りをもっとくれ 本気になりたいんだ/まだ 全然足んねえな 怒らせてくれよ》と高く突き上げるサビはそのまま、松尾レミ&亀本寛貴が時代に対して掲げる挑戦状のように、ダイレクトに胸に飛び込んでくる。

GLIM SPANKY -「怒りをくれよ」ONE PIECE FILM GOLD ver. MV(Short ver.)

GLIM SPANKYは「闘い」の音楽だ。
すべてを知った気になって、前へ進むことを止めてしまった「大人」との闘い。
熱くみなぎる“怒りをくれよ”の歌とサウンドからは、ふたりの「闘い」が単なる「“大人世代”への反抗・抵抗」ではなく、「新たな挑戦を忘れてしまった魂」を片っ端から揺り動かして回るための冒険であることがリアルに伝わってくる。

そして、そんなGLIM SPANKYの「闘い」の視線は、常に自分たち自身にも向けられている。《馬鹿は馬鹿げた夢 追うしか出来ねえんだ/試練何度越えようが 満足を蹴り飛ばし行こうぜ》という“怒りをくれよ”のフレーズは、ルフィら登場人物へのエールであると同時に、ロックの大海原へと漕ぎ出したばかりのGLIM SPANKY自身を、さらに前へ先へと突き動かす巨大な推進力にもなっている。

GLIM SPANKYのサウンドが60〜70年代ロック/ブルースのテイストを色濃く滲ませているのは取りも直さず、ロックが生き様を超えた「時代を変える思想」として存在していた古き佳き時代への憧れとリスペクトゆえだろう。
そして、ふたりの歌と楽曲がマニアックな懐古趣味ではなく「今」への強烈なカウンターパンチとして機能するのはまさに、GLIM SPANKYがスタイルとしてではなく、全身全霊を傾けて時代を引っくり返すためにロックを撃ち放っているからに他ならない。

7月20日にリリースされた2ndアルバム『Next One』。先行配信中の“怒りをくれよ”をはじめ、“NEXT ONE”“時代のヒーロー”“話をしよう”“ワイルド・サイドを行け”といった既発曲を含む今作の10曲には、己の限界に挑み突き破ろうとするGLIM SPANKYの意思が隅々にまで詰まっている。
ロックがロックであるための、渾身の存在証明。ひたむきな熱意や挑戦が、賞賛よりも先に嘲笑・冷笑の対象として取り沙汰されやすい時代にあって、迷いなく「その先」を目指して爆進を続けているGLIM SPANKYの音楽はひときわ眩しく、力強く心に響く。(高橋智樹)
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