【コラム】MAN WITH A MISSION『狼大全集Ⅳ』を今すぐ観るべきいくつもの理由

【コラム】MAN WITH A MISSION『狼大全集Ⅳ』を今すぐ観るべきいくつもの理由 - 『狼大全集Ⅳ』 発売中『狼大全集Ⅳ』 発売中

先月29日リリースのMAN WITH A MISSIONの映像作品『狼大全集Ⅳ』(形態はBlu-rayと、DVDは初回盤2枚組・通常盤1枚組の3種)は、激動の2015年をあらためて振り返るのにうってつけの内容だ。何しろ2015年の彼らは、大型タイアップ付きの濃密なシングル作品を次々に放っていた一方で、デビュー5周年ツアーに対バンツアー、大型夏フェス行脚、2度に渡る欧州ツアーと、濃密かつアクロバティックな活動をガンガンこなしていたからだ。新作『The World’s On Fire』の季節はまだまだ続くが、ここで新作モードの基盤となった活動の数々を再確認しておく意味は大きい。

メインとなるライブコンテンツは、ゼブラヘッドとのジョイントツアー「Out of Control JAPAN Tour 2015」さいたまスーパーアリーナ公演の初日。スプリット作『Out of Control』に続くシングル『Raise your flag』がリリースされた直後だった。5周年ツアーや対バンツアーは、ライブハウス規模の各地会場を巡っていたこともあり、このときのさいたまスーパーアリーナにおける特大スケールの熱狂は、待望感を孕んで一層凄まじいものになっていた。

残念ながら映像には含まれていないけれども、ゼブラヘッドの変わらぬおバカなパーティバンドぶり(僕が実際に観たのは2日目)も最高だったし、2015年MWAMのシングル攻勢にモノ言わせる“The Cure”や“STELLA”といった広がりのある楽曲群も、巨大な会場に映えている。ジャン・ケン・ジョニーはこの密度の高い熱狂を「ライブハウス、さいたまスーパーアリーナ」と呼び、クライマックスはとっておきのコラボ曲“Out of Control”である。

さて、今回の映像作品でもうひとつ重要なのが、2度の欧州ツアーを約40分間に詰め込んでみせたドキュメンタリーだ。ドン・ギルモアやショーン・ロペスといった、新作に関わったプロデューサーたちの証言。それにゼブラヘッドはもちろん、MxPxやドゥノッツといったパンクサバイバーたちとの胸熱な交流を絡めながら映像は進む。コミカルかつ軽快に編集されているし、そこがMWAM作品らしさでもあるけれど、実際はこれ、めちゃくちゃ過酷なツアーだと思う。公演間の移動はまさに欧州全域を股にかけたハードなもので、いくらジャン・ケンの案内するツアーバスが快適だと言っても、限度はあるだろう。

なぜ、ここまでやるのか。憧れ? リスペクト精神? 確かにそれも重要だ。でもそれだけではない。『The World’s On Fire』のツアーでジャン・ケンが語っていたのは、ライブハウスの残留思念を伝える、ということであった(5月・新木場スタジオコーストのライブレポート参照→http://ro69.jp/live/detail/145054)。あのオオカミたちは、世界中のライブハウスに染み付いた無数の思いを汲み取ってきたのだ。その経験は間違いなく、日本のライブ文化を根っこの部分から強く育てるだろうし、単なる借り物でも憧れでもない、新たなオリジナリティとエネルギーを持った邦楽ロックの土壌となってゆくはずなのだ。(小池宏和)
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