【コラム】ついにメジャー“侵食” 水カンの主演・コムアイの手に負えない奇天烈っぷりを考究する

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コムアイはポップミュージックの「酔拳」使い?コムアイの表現には「型」がない。

ということは、最近の水曜日のカンパネラのライブ、あるいは『HEY!HEY!NEO!』『Mステ』をはじめとする音楽番組のみならず情報番組なども含めたテレビでのパフォーマンスを観た方なら、誰もがリアルに感じていることと思う。

特定の振り付けなどがあるわけでもない(昨年11月のワンマンで大人数ダンサーとともに披露した“ラー”特別バージョンは別だが)のはもちろん、ライブではしばしば舞台を降りてフロアに登場したりしてステージ/観客の境目をあやふやにするし、テレビに出ればスタジオの出演者やセットまでもあっさりそのパフォーマンスに巻き込んでしまう。

さすがに当初の「鹿の解体」のようなアナーキーな演出こそ鳴りを潜めているものの、「ライブパフォーマンスは二度と同じものはない」といったレトリックとまったく別の次元で、同じ曲でも披露するたびに新しい表現のアイデアをぶっ込んでくる。

決まった構えを持たない、キュートな酔拳の如き「主演・歌唱:コムアイ」のパフォーマンスは、そのひとつひとつが痛快な「事件」になる、ということだ。
そして、その「型のなさ」は、水カンの音楽そのものにも言えることだ。

それこそ“桃太郎”や“ディアブロ”“シャクシャイン”といった、今や水カンの代名詞ともなっている浮遊系ヒップホップの曲はもちろん、ジューク〜ハードテクノなビートが轟く“ウランちゃん”、壮麗なオリエンタルハウスの風景が広がる“ラー”など、ジャンルの枠を越えて実に多岐にわたる。

それはそのまま、コムアイのフリーフォームな存在感と地続きのものだ。


いちばんの『UMA』はコムアイ、おまえだろ!そして、6月22日にリリースされた水カンのメジャー1st EP『UMA』。

今作には“チュパカブラ”“ツチノコ”“雪男イエティ”など「謎の未確認生物」を曲名に冠した7曲を収録。“チュパカブラ”で歌われているのは採血だし(ミュージックビデオではコムアイがピンクの血液を吸われてチュパカブラ化)、“ツチノコ”は原宿ホコ天の勢力争いの歌だったりする、想像の斜め上を飛んでいる歌詞も最高だ。

“クラーケン”ではドイツのミニマルバンド=ブラント・バウアー・フリックが作曲を手掛けるなど、音楽面でも新しいトライを行っている『UMA』。何より、今作から伝わってくるのは、水カンに対する世間のイメージやカテゴライズすら「型」と捉え、そこから軽やかに逸脱していこうとするかのようなコムアイの挑戦心だ。

2016年6月25日(土)からは、全国7都市を巡るツアー「水曜日のカンパネラ ワンマンライブ2016“未確認ツアー”」がスタートする。

「本当にやりたいことを、私は少しずつやれるようになってきたし、それでまた評価されるようになっていきたいなと思うので。その都度やりたいことの内容が違っても、応援してください!」

昨年11月の赤坂BLITZワンマンのMCで、コムアイはそう呼びかけていた。果たして今回のツアーはどんな空間になるのか? 気持ちよく想像を裏切りながら進化するコムアイの活躍から、まだまだ目が離せない。(高橋智樹)
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