ダミアン・ライス、悲願の初来日! 6/6 EX THEATER東京公演をレポート

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2014年12月に前作『9』以来8年ぶりの最新アルバム『マイ・フェイヴァリット・フェイデッド・ファンタジー』をリリースしたダミアン・ライスが、昨日6月6日、 EX THEATER ROPPONGIで初の単独来日公演を行った。

RO69では、同公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【ダミアン・ライス @ EX THEATER ROPPONGI】

静謐と狂騒を行き来する圧倒的な歌と才気。今回の初来日を待ち詫びたオーディエンスの沸き返る期待感をも凌駕するかのように、約3時間にわたって会場の空気を支配した、穏やかにして強烈な存在感――。前作『9』から8年の時を経て2014年末にリリースされた3rdアルバム『マイ・フェイヴァリット・フェイデッド・ファンタジー』を携え、アイルランドが生んだ孤高の吟遊詩人ことダミアン・ライスの初来日公演が、フジロック出演キャンセル(2007年)から実に9年越しでついに実現。たったひとりの歌と演奏で、EX THEATER ROPPONGIのオーディエンスを怒濤のスタンディングオベーションへと導いてみせた、圧巻の名演だった。

舞台中央にギタースタンドとマイク、上手にハーモニウム(リードオルガン)の機材、後方にシンバルなどパーカッションのセット、そして下手にはなぜかワインとグラスを乗せたテーブルセットが用意されたステージに、ダミアンがゆっくりと登場したのは、開演予定の19:30を20分ほど過ぎた頃だった。会場の静かな熱気とじっくりギアを合わせるように“Older Chests”“Delicate”と1stアルバム『O』収録曲を歌い上げる、繊細にして豊潤なヴォーカリゼーション。ブルースとフォークが美しく絡み合う、物憂げな楽曲世界。ダミアンの指がアコギの弦を滑る音やエフェクターのノイズまで聴こえるような張り詰めた静寂の中、最新作から“My Favourite Faded Fantasy”のメロディを歌い奏でるダミアンの音像がしだいに歪み、やがて衝撃波の如き轟音へと昇り詰め、客席に感激と戦慄が走る。

音源では多彩な音像を駆使して表現している楽曲群を、アコギとエフェクター、ルーパーを駆使して、サポート・ミュージシャンの手を借りることなく表現していくダミアン。“9 Crimes”では、痺れるようなディストーション・サウンドと、ルーパー(フレーズ・サンプラー)のサウンド・オン・サウンド効果で次々に歌とサウンドを織り重ね、ひとりオーケストラ的なスケール感を描き出していく(“Long Long Way”ではさらにハーモニウムのミステリアスな響きも加わる)。その一方で、下ネタありありのジョークとシリアスなメッセージが秒刻みでスイッチングされるような独特のMCも、広い会場のステージと客席の距離感をぐっと縮めていく。

“Cheers Darlin’”では客席の女性をステージに上げたかと思うと、ギターを置いたダミアンと舞台下手のテーブルで乾杯して1杯、2杯、3杯……と次々にワインのグラスを空けていく(4〜5杯は空けていたはず)。メランコリックな歌声を響かせながら、バックトラックに絶妙のタイミングで乾杯のグラス音を重ねてみせる、音楽のライブとミュージカルとミュージック・コンクレートが渾然一体となったような、実にマジカルなひとときだった。さらに、“Volcano”では「歌いたい人いる?」という彼の呼びかけに応えて数十人レベルで集まったオーディエンスを舞台に上げて、いくつかにグループ分けした観客即席コーラス隊(?)に《volcanoes melt me down》《What I am to you is not real》のフレーズを託してみせる。アコギを弾き歌うダミアンと、彼を取り囲んで座る観客という、着席スタイルのライブとは思えない光景の中、満場のクラップとともに途方もない高揚感が広がっていった。

そんな「ダミアン・ライスと仲間たち」状態のまま“Cannonball”、さらに観客のリクエストに応えて“Elephant”“Eskimo”を披露した後、本編ラストを飾ったのは“It Takes A Lot To Know A Man”。アコギのみならずクラリネットやベル、舞台後方のパーカッション・セット、さらにここまで登場しなかったテレキャスターまで弾きまくって音を重ね合わせ、オーディエンスの憂いや悲哀といった感情丸ごと「ひとり轟音フォーク・ブルース」の力で空に解き放ってスパークさせるような、凄絶な場面を生み出してみせた。

MCの長さが祟ったのか、本編終了の時点でとっくに22時を過ぎており、アジアツアーでは4曲前後演奏しているアンコールは会場の都合で“Rootless Tree”“The Blower's Daughter”の2曲止まりとなったものの、まだまだ歌い足りなかったらしいダミアンは終演後にも会場外で2曲披露。奇跡の一夜をさらに美しく彩ってみせた。ソロ・デビューから14年でようやく実現した来日公演。ダミアン・ルイスと日本の物語がいよいよ始まった――という実感に満ちた、濃密なアクトだった。(高橋智樹)
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