【完全レポ】うたうたい斉藤和義が、ロングツアーで残していったもの――5月22日公演を振り返る

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斉藤和義が、5月22日に全国ツアー「KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016 “風の果てまで”」の東京公演を日本武道館で開催した。RO69では、この模様を写真とレポートでお届けする。

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●セットリスト
1.あこがれ
2.ワンダーランド
3.君の顔が好きだ
4.攻めていこーぜ!
5.ウサギとカメ
6.夢の果てまで
7.Player
8.劇的な瞬間
9.恋
10.シンデレラ
11.青い光
12.Summer Days
13.アバリヤーリヤ
14.さよならキャディラック
15.傷口
16.やさしくなりたい
17.歩いて帰ろう
18.何処へ行こう
19.時が経てば
(encore)
1.Endless
2.マディウォーター
3.ずっと好きだった
4.ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー

斉藤和義のキャリア史上最長のロングツアー「KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016 “風の果てまで”」全67公演がついに終了した。ツアーが終了するまでは、ライブを楽しみにしている人たちのためにも、詳細なレポートは控えていたけれど、ツアーも終了したので、5月22日の東京公演、日本武道館(2Daysの2日目)でのライブを、振り返ってみる。

今回のライブツアーは、アルバム『風の果てまで』を提げてのもので、武道館のステージセットも、そのタイトルをイメージさせるものだった。風がたどり着く最果ての場所、例えば乾いた山岳地帯、例えば流れ着いた無人島、あるいは寂しい都会の路地裏。楽曲に合わせて、照明や映し出す映像を変えながら、様々な景色を浮かび上がらせていく。ここまで凝ったステージセットは、斉藤和義の過去のツアーの中でも、あまりなかったように思う。ライブはアルバムの1曲目でもある“あこがれ”でスタート。この日はツアー62公演目を数えるということもあり、バンドのアンサンブルや音のバランスも、もはやパーマネントなバンドかと思うほどに完成されていた。そして憂いを含んだような斉藤のボーカルとギターに、初っぱなから引き込まれてしまう。「今日は最後まで楽しませてもらいます」という言葉がとても斉藤和義らしい。「楽しんでいって」と言う前に、「楽しませてもらう」という自由さこそ彼の魅力だ。そして「懐かしい曲をやります」と“君の顔が好きだ”を披露。1994年のシングル曲にして素晴らしいラブソング。しれっと下ネタも挟んだりして、このいい感じの力の抜け具合がたまらない。堀江博久(Key)の奏でるピアノの音もラフな雰囲気で盛り上げていく。

MCでは「今日は照明がめちゃめちゃ暑いです。全員ノーパンでやってますから」とか言いつつ、突然、山口 寛雄(B)に向かって、「あ、チ○ポ出てるよ」なんて言い出す。山口は冷静に「これベースです」と返す。このやりとり、これまでの「62公演の中で51回はやっている」とかで、そりゃ返しの「間」も完璧なわけだ(笑)。こんな調子で、うっかりそんなレポートばかりしてしまいそうだけれど、今回のライブは非常にバンド色が濃いというか、それぞれのメンバーの個性がしっかりと音に反映されていた。真壁陽平(G)の、ハードロックスタイルで繰り出す硬軟自在のギター、玉田豊夢(Dr)の冷静と炸裂のメリハリの効いたリズム、山口寛雄のしなやかで強いグルーヴ、堀江博久の軽快で華のあるピアノやエレクトリックマンドリン。作品音源とはまた異なる感触の演奏に、斉藤和義の激しさや切なさや情けなさや、様々な情感がにじみ出た歌とギターが乗る。素晴らしい。

中盤、日替わりで「その日の気分で(演奏する曲を)決めているんですけど」という、弾き語りコーナーがあり、斉藤和義以外のメンバーは一旦ステージを去る。そこで披露されたのは、なんと“劇的な瞬間”。切ないラブソングがアコギ1本で奏でられる。広い会場に響いているのはギター1本だけのはずなのに、この幾重にも重なるような音の重厚さは何なのだろう。スクリーンにギターを弾く手元のアップが映し出されると、吸い込まれるようにその動きに見入ってしまう。そして歌の強さ、切なさ。曲が終わっても歓声が鳴り止まない。さらに『風の果てまで』に収録されている、究極のジェラスガイ系ラブソング“恋”へと続き、今度は会場中が水を打ったように、その歌に耳を傾ける。
本当に、見所を書き出せばキリがないほどの濃密なライブだった。ヘビーなポエトリーリーディングのような“青い光”では、エンディングの臨界を思わせるとても綺麗なブルーの照明が脳裏に焼きつく。その余韻をかき消すように、爽やかなマンドリンの音が印象的な青春ソング“Summer Days”。そして新アルバムから“アバリヤーリヤ”のイントロが始まると、オーディエンスの腕がゆらゆらと左右に揺れ、エキゾチックで心地好い浮遊感が会場を支配していく。ラストは打ち込みのシーケンスだけをバックに、メンバーが楽器を置いてステージ中央に集まり縦一列に整列。何が始まるのかと思いきや、全員でまさかの千手観音ダンス! からの、“Choo Choo TRAIN”よろしく腕をぐるぐる回しながらのロールダンス! いやもう、このダンスをこの人たちがみんな揃って一緒に練習したのかと想像すると、ほんとにもうお腹痛いし、なんだか嬉しくなってしまった。

終盤は“やさしくなりたい”“歩いて帰ろう”など、出し惜しみなくヒット曲を連発(もちろんシンガロングが起こる)。そしてヘビーなうねりを残す“時が経てば”で本編は終了。アンコールでは、現在放送中のドラマ『不機嫌な果実』の主題歌“マディウォーター”も披露。不倫という俗っぽいテーマでも、エキセントリックでシャープなサウンドで「泥沼」を表現していく、斉藤和義ならではの切り口にただただ脱帽。1曲目にやった“あこがれ”もそうだけれど、どうしようもなく破滅に向かう女の生理みたいなものを、この人はどうしてこんなによくわかっているんだろう。

この日のラストは“ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー”。肩の力の抜けたロックンロールがショーのエンディングにふさわしい。メンバー紹介をしながら、リラックスした雰囲気で、突然各パートのソロを要求したり、なんとも温かく心地良いムードの中で幕を閉じた。終演後、スクリーンに映し出されたのは「股ねん!」の文字。本当にもう最後まで(笑)。濃密で最高に幸せな3時間。文句なしに素晴らしいバンドサウンドが今も耳に残っている。(杉浦美恵)
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