ロジャー・ダルトリー、壮絶な60年代のビートルズ・ライヴ体験とザ・フーの新作を制作しないわけを語る

ロジャー・ダルトリー、壮絶な60年代のビートルズ・ライヴ体験とザ・フーの新作を制作しないわけを語る

5月30日に活動50周年を記念するザ・フー・ヒッツ・50ツアーの北アメリカ公演分を終えたザ・フーだが、ロジャー・ダルトリーはビートルズとの公演や新作を作る気にならないわけなどについて語っている。

バンドは31日にはロジャーが主宰している10代のがん患者を支援する団体、ティーンエイジ・キャンサー・トラストのロサンゼルスでのチャリティ・ライヴにもザ・フーとして出演したが、チャリティの一環として行われるオークションではビートルズのプロデューサーとして有名なジョージ・マーティンの息子が、"イエスタデイ"の直筆歌詞原稿のジョージ・マーティンとポール・マッカートニーのサインが入ったリトグラフ複製プリントを出品してくれると明かしていて、団体の資金集めにかなり寄与してくれるはずだと喜びを表している。

ローリング・ストーン誌の取材に応えてポールとジョン・レノンに初めて会ったのはいつのことかという問いにロジャーは次のように振り返っている。

「1964年、イギリスのブラックプールのブラックプール・オペラハウスでのライヴで前座を務めたんだ。日曜の晩で俺たちの出番が連中のひとつ手前だったんだ。ジョン・レノンが舞台奥の幕の裏で、ピート・タウンゼントのギター・アンプのちょうど背後でずっとピートの演奏を聴いてたってローディーがいってたのを今でも憶えてるよ。そもそもフィードバックとかそういう効果を使い出したのは、バンドとして俺たちが史上初めてだったんだけど、明らかにジョン・レノンはそれをずっと聴いてたんだよね。で、その次のシングル("アイ・フィール・ファイン")でビートルズはいきなりフィードバックを使い始めたんだよ」

この日のライヴでそれ以外のことで憶えていることはと訊かれるとロジャーは次のように答えている。

「ビートルズの演奏については音ひとつさえ聴こえなかったのをよく憶えてるね。ファンの絶叫がね、この世で最も意味のわからないノイズとして襲ってくるんだ。聴けたとしても音楽を聴けるのは2秒くらいで、その後はもう金切声の絨毯爆撃だよ。その後、突然、おしっこの臭いが漂ってくるんだ。ビートルズのファンっていうのは、興奮のあまり失禁しちゃうもんだったんだよね」

自分たちのファンが失禁することはなかったのかという問いにロジャーは「そんなことはなかったはずだと思うな。俺たち不細工過ぎたから」と答えている。

また、ピートの手元に楽曲のストックがいくらでもあることはピート自身も明らかにしていることなので、ザ・フーとしての新作制作は考えられないのかという問いには次のように答えている。

「そういう話はしてるんだけどさ、そう簡単にはいかないよね。もうレコード産業というもの自体が存在しないんだから。レコードなんかもう作る気にもならないよ。レコードを作るにはこっちが費用を出さなきゃならないんだから。おまけに印税も入って来ないんだからとても実現させられる話じゃないね。レコード業界っていう世界はもうないんだよ。レコードの制作費をどうやって捻出してくればいいのか。俺にはわからないんだ。けれども、とりあえず自分の音楽をただでばらまくために自分の身銭を使ってまでレコードを作る気になんか絶対にならないよ。いくら俺だってそこまでの浪費はできないよ。同じ無駄遣いをするにしてもほかにまだましなことがあるから」

Q:音楽業界そのものが絶えず変化にさらされているわけですよね。

「すべてかっぱらわれたんだよ。インターネットが幅を利かせてきたやり方は、史上最悪の略奪行為だよ。ミュージシャンはもうこの先ただで働けばいいってことなんだからね」

Q:アーティストはストリーミングで収入を得られますが、アルバムやCDで受け取るほどではないですからね。

「きみさ、それ冗談でしょ? ストリーミングで金貰ってるなんて、ふざけちゃいけないよ。もう無法地帯なんだから。ミュージシャンは毎日追剥に襲われて強奪されてるんだよ。それが今や映画やテレビやありとあらゆるものにも忍び込んできてるんだよ。よく考えればわかるはずだよ、インターネットというのは、ゆっくりではあるけれども、ありとあらゆるものを破壊してるんだから。そのおかげで人々の生活がよくなったなんて俺は少しも思わないから。ただ、仕事が増やされただけで、増やされた方がなんだか前よりちょっと必要とされているのかもって思わされてるだけで、すべて嘘っぱちだよ。フェイスブックでいいね!を5万ヒット獲得してなんか必要とされてるような気になってるだけで、すべて見せかけだけだから。そんなもん全部ゴミだし(笑)。もうちょっと空を見上げてみろっていうんだよ。もうちょっと現実の世界を生きてみろって」 
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