【コラム】嵐、攻め続ける2016年! 『I seek / Daylight』でいま一度示す「嵐らしさ」とは?

【コラム】嵐、攻め続ける2016年! 『I seek / Daylight』でいま一度示す「嵐らしさ」とは?

前作『復活LOVE』から3ヶ月ぶり、嵐の今年2枚目のシングルとなるのがこの『I seek / Daylight』だ。久々の両A面シングルで、“I seek”が大野智主演ドラマ『世界一難しい恋』の主題歌、“Daylight”が松本潤主演主演ドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』の主題歌となっている。

同クールのドラマに嵐からふたりが出演するのもこれまた久しぶりだが、大野と松本の今回のドラマはふたり揃って「意外性」の作品になっているのが特徴だ。『世界一難しい恋』は、これまでコミカルからシリアスまで幅広い役柄を演じこなしてきた大野智にとって意外にも初の本格ラブストーリー。一方の『99.9』では、逆に嵐でもとりわけ恋愛ものを得意としてきた松本がエキセントリックかつオフビートなキャラクターに初挑戦しており、共に役者としての新境地を切り開いた作品となっているのだ。

山下達郎との予期せぬ化学反応を生んだ“復活LOVE”、そしてなんと9年ぶりにアリーナツアー開催と、2016年の嵐は依然として攻めのモードが続いているが、大野と松本が意外性の中で結果を出した『世界一難しい恋』と『99.9』もまた、その攻めモードであるのは間違いないだろう。

さて、そんな『世界一難しい恋』と『99.9』の主題歌である“I seek”“Daylight”だが、この2曲はむしろ意外性とは真逆、むしろ嵐の嵐らしさのど真ん中で鳴っているのが面白い。「バック・トゥ・ベーシック」とでも言うべきか、攻め続ける嵐が今一度、自分たちの足元を確認するかのような2曲なのだ。

“I seek”は先へ先へと跳ね進むような昂揚が続く、嵐お得意のファンク/R&Bナンバーで、キーとなっているのはホーンとストリングスのゴージャスな響きだ。ちなみに通常の嵐曲は5人のほぼ均等な歌割りによって構成されているが、メンバーの主演ドラマ・映画の主題歌の場合は、主演メンバーが少しだけ前面にフィーチャーされるのがお約束になっており、ここでは大野の甘くまろやかな歌声とR&Bサウンドが抜群の相乗効果を生んでいる。

ドラマの中では性格に難ありでずっこけ気味の若社長を演じている大野だが、ここではリアル・エグゼクティブ!って感じのスタイリッシュなセクシーさを発揮。前作“復活LOVE”にしてもそうだったけれど、近年の大野のボーカリゼーションは天性の歌の上手さに加えて、息づかいのリアルなニュアンスと言うか、まさに「色気」と呼ぶべき艶が重ねられてきたのを感じる。かつての嵐のファンク/R&Bナンバーは、彼らがちょっと背伸びをしているアンバランスが魅力だったわけだが、大野のボーカルの進化も含めて、近年のそれはもはや自然体かつ大人の余裕を感じさせるものになってきているのだ。

一方の“Daylight”はこれまた嵐の定番のメロウで柔らかなミドルテンポのバラードで、キーとなるのはピアノとシンセの美しい旋律。“I seek”が分厚いユニゾンの迫力で勢いよく攻め聴かせているのに対して、ここではメンバーのかわるがわるのコーラスカップリングの妙、そしてソロボーカルのリレーによってそれぞれの声の個性を聴き比べられる作りになっている。嵐のボーカルは、こういう曲調になると途端にナイーブな少年性が立ち上ってくるのが面白い。そう、“I seek”と“Daylight”は様々な意味で対照的な2曲になっているのだ。

“Daylight”で特筆すべきは、櫻井翔のラップがシングル曲としては実に4年ぶりにフィーチャーされている点。しかも「まだ見ぬ未来の方向を示す」という、“ペンの指す方向”や“Hip Pop Boogie”といった過去の櫻井のエポックメイキングなラップでも繰り返し紡がれてきた、彼のリリックにおける普遍のテーマが本曲にも通底しているのが感動的だ。まさに「嵐の羅針盤」の役割を担ってきたサクラップの復活であり、しかもそれが松本が自ら櫻井にリクエストして実現したというのも、実に嵐らしいエピソードだと思う。

変わり続け、攻め続ける嵐と、変わらない、帰ってくる場所を示す嵐。『I seek / Daylight』はそのふたつの交差する場所で鳴っているのだ。(粉川しの)


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