ブライアン・ウィルソン、『ペット・サウンズ』完全再現!4/12初日公演を速報レポート

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ブライアン・ウィルソンの「『ペット・サウンズ』50周年アニバーサリー・ジャパン・ツアー」初日公演が昨日4月12日、東京国際フォーラム ホールAで開催された。

RO69では、『ペット・サウンズ』のリリース50周年を記念して行われた最後の完全再現ライヴになるという同公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【ブライアン・ウィルソン @ 東京国際フォーラム ホールA】

『ペット・サウンズ』50周年アニバーサリー・ジャパン・ツアー、初日。最初に書いてしまうと、2時間半を超える今日のライヴは、ブライアン・ウィルソンという主体が、「ビーチ・ボーイズを手放す」までを描く第1部、「『ペット・サウンズ』を塗り替える」ための第2部、そして「ビーチ・ボーイズとブライアン・ウィルソンを祝福する」ための第3部、という3部構成となっていた。以下、各部をそれぞれレポートしていく。

■第1部
ほぼ全曲をビーチ・ボーイズのヒット曲とレア曲で固められた第1部ではまず、10人以上のバンドが様々な楽器を代わる代わる持ち替え忙しなく演奏している中ステージの中央でポツンと座るブライアンという構図が出来、彼の音楽を生む頭の中の箱庭を再現しているようで、それだけで胸を打つものがあった。セットが進む中、元ビーチ・ボーイズであるアル・ジャーディンはもちろん、彼の息子マット・ジャーディン、ブライアン・バンドでもお馴染みのダリアン・サハナジャが次々メイン・ヴォーカルを取っていく。しまいには、終盤に登場したブロンディ・チャップリンがエネルギッシュかつラウドなギター・サウンドでそれまでのライヴにはなかったムードを持ち込むと、彼が3曲続けてフロント・マイクを奪い、そのまま第1部が終了してしまう。そう、ここまでの1時間は、ブライアンが必ずしも前面に出ず、またバンドをフルにコントロールしないことで、ビーチ・ボーイズの残した音楽がブライアン・ウィルソンの所有物として存在していないとブライアン自身が認めていることを告げるような内容だったのだ。

■第2部
20分の休憩を経て再開した第2部は、本公演の目玉である『ペット・サウンズ』再現。第1部との差として、さらに増えた楽器の種類もあるが、ほぼ全曲でブライアンがメイン・ヴォーカルを取ったことが何より大きい。やはり、ビーチ・ボーイズは譲れても、この作品だけは、どうしても彼の物語でしか有り得ないのだ。恋人との幸福な未来を夢見る“Wouldn’t It Be Nice”から恋の終焉“Caroline, No”までの13曲をかけ、ブライアンの心が壊れるまでを生々しく描き出した『ペット・サウンズ』。このアルバムの肝は、天上の調べのように美しいメロディやハーモニーに対し、全く独立して不穏に蠢き続ける低音とのコントラストにこそ、つまりブライアンの精神世界をそのまま映したような引き裂かれたサウンド構成にこそある。そのはずが、である。今日の『ペット・サウンズ』は、その哀しさを、そうした作曲家の思想や概念を、鳴る音楽の凄まじさが上回り、飲み込んでいたのだ。同じスコアを演奏しているのに、楽曲に込められたアイデアの豊潤さがエモーションに侵される瞬間が無かったのである。何故か。それは、他ならぬブライアン・ウィルソンがそれを望んでいるからだ。何故望むのか。それは、第3部の終わりに示された。

■第3部
破格の名曲“Good Vibrations”で幕を開けた第3部では、第1部と第2部の「儀式」を終えたせいなのか、バンド・メンバーのグルーヴが格段に引き締まり、またブライアンのヴォーカルもここまでで最高の安定感を見せた。その上、“Help Me, Rhonda”や“Surfin’ U.S.A.”といったアッパーなアンセムをシームレスに連発するのだから、照明の明るさも増した会場のオーディエンスは総立ちで踊り狂わずにいられない。しかし、そんな祝祭としての第3部を、今日のライヴを締めくくったのは、他のどのヒット曲でもなく、ブライアン・ウィルソンのソロ・デビュー作のオープニング曲“Love And Mercy”だった。一昨年制作された、60年代の『ペット・サウンズ』完成までと80年代のブライアン復活までとを並行して描いた同名の伝記的映画の影響もあるだろう。そもそも復活作のオープニングという、彼の再出発を象徴する曲だという意味もあるだろう。ともかく、「今の」彼のキャリアの始点となったこの曲を、また1つの区切りとなるであろうこのライヴの終点に持ってきたのだ。それはつまり、この区切りからまた何かを始めようという意思が彼の中に働いているということなのではないだろうか。だから、ビーチ・ボーイズを共有し、『ペット・サウンズ』を更新し、オーディエンスと共に自身の音楽を楽しむことが出来たのではないだろうか。終演後にメンバーと手を組み、気恥ずかしそうに、だけど確かに晴れやかな表情で礼をするブライアンを観ていたら、そう思えて仕方がなかったのだ。(長瀬昇)

〈SETLIST〉
第一部(Greatest Hits & Rare Cuts)
M1. Our Prayer / Heroes And Villains
M2. California Girls
M3. Dance, Dance, Dance
M4. I Get Around / Shut Down / Little Deuce Coupe
M5. In My Room
M6. Surfer Girl
M7. Don’T Worry Baby
M8. Wake The World / Add Some Music To Your Day
M9. Then I Kissed Her
M10. Darlin’
M11. One Kind Of Love
M12. Wild Honey
M13. Funky Pretty
M14. Sail On, Sailor

第二部 (Performing “Pet Sounds” In Its Entirety)
M15. Wouldn’T It Be Nice
M16. You Still Believe In Me
M17. That’S Not Me
M18. Don’T Talk (Put Your Head On My Shoulder)
M19. I’M Waiting For The Day
M20. Let’S Go Away For Awhile
M21. Sloop John B
M22. God Only Knows
M23. I Know There’S An Answer
M24. Here Today
M25. I Just Wasn’T Made For These Times
M26. Pet Sounds
M27. Caroline, No
En1. Good Vibrations
En2. All Summer Long
En3. Help Me, Rhonda
En4. Barbara Ann
En5. Surfin’ U.S.A.
En6. Fun, Fun, Fun
En7. Love And Mercy

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●ライヴ情報
【公演日程】
東京公演:東京国際フォーラム ホールA
2016年4月13日(水)開場 18:00 / 開演 19:00

大阪公演:オリックス劇場
2016年4月15日(金)開場 18:00 / 開演 19:00

【料金(全席指定・税込)】
S席:¥12,500 A席:¥10,500
※未就学児童入場不可

(お問い合わせ先)
東京公演:キョードー東京 0570-550-799 http://kyodotokyo.com/
大阪公演:キョードーインフォメーション 0570-200-888

更なる詳細は以下のサイトで御確認ください。
http://bw-japantour.com/
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