2016年4月5日、THE ORAL CIGARETTESがワンマンツアー「THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー 〜奈良まで続くよ道のりはツアー！〜」を赤坂BLITZから開始させた。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。

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1月4日にはZepp DiverCityにてリベンジワンマン、2〜3月にはツーマンツアーと、2016年もフル稼働中のTHE ORAL CIGARETTES。その勢いを止めることなく4月5日には「THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー 〜奈良まで続くよ道のりはツアー！〜」がスタートした。以下では初日の赤坂BLITZ公演をレポート。ツアー真っ只中のためネタバレは最小限に抑えるが、一部曲目表記を含むため、今後の公演に参加予定の人は閲覧にご注意を。

満員状態の場内に熱量漲るサウンドが投下されれば、もちろん初っ端から大沸騰状態の赤坂BLITZ。そんなフロアの様子を見渡しながら、間奏中も口パクでオーディエンスに何か喋りかけ、「ヤバい！対バンでもフェスでもあらへん、今日ワンマンやねん！」と興奮を表すのは山中拓也（Vo・G）。長髪を振り乱し歌詞を大きく口ずさみながら演奏する鈴木重伸（G）や、アクロバティックに動きつつ低音を泳がせるあきらかにあきら（B・Cho）も、ステージ前方へしきりに走りこんでは笑顔を見せる。奔放な3人の手綱をしっかりと握りバンドを引き締める中西雅哉（Dr）のドラミングも冴えている。毒っ気と色気が不敵に混ざり合う“マナーモード”などの『FIXION』収録曲だけでなく、“Mr.ファントム”をはじめとしたライヴ定番曲、さらにはインディーズ時代にリリースされた曲も披露されたこの日のライヴ。曲が変わるたびにその音ひとつで会場の空気を一変させるメンバーの集中力に圧倒される。

「今オーラルができること」を高濃度で詰め込んだ名刺代わりの1stフルアルバム『The BKW Show!!』とは異なり、このバンドの持つ歌心を前面に出した2ndフルアルバム『FIXION』。今回のツアーはそのレコ発ということもあり、「歌を聴かせる」という意識がライヴにも色濃く表れていた。とはいえヴォーカルだけがひたすら目立っているわけではなく、むしろ、バンドの軸が定まったことによって各楽器の旋律が鮮明になったという方が正しい。4人とも演奏がより自由で独創的になっていて、ギミックに富んだ挑戦も映えていた。もう一段階クリアに、もっと遠くに届くようになったサウンドはこのバンドが次のフェーズへ突入したこと——「若手注目株」的な代名詞を飛び越えて頭ひとつ抜けるための鍵を手に入れたこと——を物語るには十分なものである。

ツーマンツアーを経て仲間の大切さを実感した反面、「お客さんを僕らだけのものにしたい」という欲も生まれたと語る山中。そしてその欲は後のMCで「守るべき人がハッキリ見えているからそういう人を大切にしたい」と言い換えられた。攻めの姿勢を公言してきた彼らが、攻めと守りは実はイコールだったことを知った意味は大きい。新曲（先月のTHE BAWDIESとのツーマンでも披露された曲）だけではなく、この日の演奏すべてに込められていたのは、変化を恐れず、目の前にいるあなたとともに次のステージに向かいたいんだという意志だった。あらゆる感情を素直に落とし込むサウンドを背に、ときには胸を叩きながら、訴えかけるように歌う山中。急ぐ気はないし長くバンドをやっていきたい、と前置きしてから「時間かかるかもしれないけどテッペンまで連れて行くつもりです。これからもよろしくお願いします！」とオーディエンスに挨拶した。壮大な景色を描きながらも、聴き手一人ひとりと深く繋がることを望む歌。一見相反するものに見える両者を抱きしめる覚悟とともに、オーラルは進んでいく。番狂わせの大どんでん返しではなく、順当な勝利をその手で掴んでいく行為は、彼らに新たな未来を運んでくれるはずだ。

全国5ヶ所を巡る本ツアーはタイトルにもあるように、4月30日、なら100年会館に向けて行なわれる。地元凱旋公演かつ初のホールワンマンでもあるこの日を終える頃には、バンドも一皮剥けた状態になっていることだろう。今はとにかく、「ここからまた何かが始まる」という期待感でいっぱいだ。（蜂須賀ちなみ）
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