【コラム】ASIAN KUNG-FU GENERATION、結成20周年に寄せて――『ソルファ』リメイクが指し示すアジカンの未来

【コラム】ASIAN KUNG-FU GENERATION、結成20周年に寄せて――『ソルファ』リメイクが指し示すアジカンの未来

1996年のバンド結成から数えて今年が20周年となるASIAN KUNG-FU GENERATION。3年前=2013年にメジャーデビュー10周年記念ライヴを横浜スタジアムで2日間にわたって開催したばかりだし、同年6月の「NANO-MUGEN CIRCUIT」のステージで後藤正文自身も「これから我々、着実に老け込んでいきますけども。2年と3年ごとに1回アニバーサリーイヤーがやってきますので(笑)」と自らネタにしたりしていたが、シーン最前線からでっかくロックを鳴らし続けてきたバンドが、そのスタートから20年の時を経てなお「今」を震わせ続けているという事実は、何遍だって祝福するに値するものだと思う。

上記の横スタ公演でも「横浜の片隅で、誰にも見つけてもらえずに、ほんとにいじけて、石ころみたいに転がって……その時の気持ちを思い出すとね、今でも悪夢の中にいるような気分になる」とゴッチが回想していたメジャーデビューまでの7年間。デビューシングル『未来の破片』当時、僕が『ROCKIN'ON JAPAN』のインタヴューで初めて出会ったゴッチはまさに、そんな葛藤とルサンチマンの真っ只中にあった。しかしアジカンは、そんな重力崩壊必至な想いのすべてをロックの爆発力に変えて、2003年の1stアルバム『君繋ファイブエム』としてありったけの衝動とともに撃ち放ってみせた。

ワンマンツアーも未経験だった当時のアジカンは、『君繋ファイブエム』によって一気にシーンの熱狂の渦へと巻き込まれていくことになった――が。彼らはバンドを取り巻く圧倒的な期待感を2ndアルバム『ソルファ』で真っ向から受け止めて、ロックの彼方へ導いてみせた。そんな激流のような状況を、メンバー自身は先日某媒体の取材で話を訊いた際にも「『ソルファ』のことはあんまり覚えてない」と口にしていたが、そんな狂騒感に抗いながら1年足らずの短期間で『ソルファ』を作り上げ、ロックシーンを前進させた彼らの姿そのものが、ひとつの大きなロックの物語を体現していたことは間違いないし、あのスリリングでドラマチックな季節の熱気は今でもありありと思い出すことができる。

すでに発表されている通りアジカンは、『ソルファ』全収録曲を再レコーディングしたセルフカヴァー盤を今秋リリース、それに先駆けて2016年3月16日(水)には、『ソルファ』収録曲“Re:Re:”の再レコーディング版(TVアニメ『僕だけがいない街』OP曲としてオンエア中)をシングルとして発売する。現在のライヴではお馴染みのイントロアレンジとともに新録された“Re:Re:”は、荒削りな衝動ではなく「その先」を目指す意志でロックを鳴らすアジカンの「今」のモードをリアルに伝えるものだし、「セルフカヴァーベスト盤」や「初期アルバム完全再現ライヴ」といった形ではなく、混沌と激動に満ちた時期の記録を「今」の表現力と訴求力でアップデートしたスタジオ盤を作ったらどうなるか?という新たな形の好奇心が、格段にスケール感を増したその音から滲んでくる。結成20周年の今こそ鳴らせる「『ソルファ』のその先」の景色が、ここには確かにある。

ちなみに、途中加入の伊地知潔はまだアジカン18周年なので、再来年には「キヨシ加入20周年」と「メジャーデビュー15周年」が同時に訪れることになる。「今」と「これから」をどんどん謳歌し祝いながら、もっともっとたくさんロックを鳴らしていってほしい、と改めて思う。結成20周年おめでとう。(高橋智樹)
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