「15年間のバンド人生を全部ぶつけて音を届けたいと思います！」――いち早くステージに現れたたなしん（Ba／Cho）がそう叫んだオープニングの時点から、場内には尋常ではないエネルギーが渦巻いていた。結成14年目にして迎えたグッドモーニングアメリカ初の日本武道館ワンマン。それは、彼らが放つ歌とサウンドと言葉の全てから、この夢舞台に辿り着いた感慨がリアルに透けて見える感動的なアクトだった。

当初の公約通り見事バク転を成功させたたなしん（実は今まで一度も成功していなかったそうです）による冒頭の開会宣言で幕を開けたステージ。1曲目“拝啓、ツラツストラ”から、金廣真悟（Vo／Gt）のビブラートがかった歌声が場内いっぱいに響きわたる。そのまま“キャッチアンドリリース”“光となって”と畳み掛けると、武道館の天井を突き破らんばかりにダイナミックなバンドサウンドが炸裂。ペギ（Dr／Cho）の爆裂ビートが轟く中、たなしんの甲高いオイコールが繰り出され、オーディエンスの拳を振り上げさせていく。そして、「ずっと夢に描いてきたこのステージを迎えられて本当に嬉しいです！」と渡邊幸一（Gt／Cho）。続けて、このステージに賭ける思いを熱い言葉で届けると、温かな拍手が会場を満たしていった。

その後も、キャリア凝縮型のセットリストでバンドの軌跡を辿るようなライヴを展開。“ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ”“ 空ばかり見ていた”など、長年ファンに愛されてきたアンセムが武道館で盛大に響きわたるさまには思わず胸を打たれてしまう。もちろん、特別なステージならではの演出も満載。中盤の“そして今宵は語り合おう”では、来場時に配られたペーパーに従ってオーディエンス全員がケータイを光らせる演出があったのだが、これはたなしんが他のメンバーに秘密で仕込んだサプライズであり、歌い終えた金廣が「ちょっと泣きそう……」と言葉を詰まらせるシーンもあった。さらに恒例の「ファイヤー！」コールのくだりでは、なんとプロレスラーの大仁田厚氏が乱入！ 散々たなしんにビンタやパンチを食らわした後、本家「ファイヤー！」コールを轟かせて場内をヒートアップさせた。

後半には「武道館で歌われるために8年前に作った曲」（金廣）として、ペギが加入した頃の超初期曲でありながら、先月リリースされた3rdアルバム『グッドモーニングアメリカ』でやっと音源化された“友よ”を披露。一丸のシンガロングを目の当たりにした幸一は「誰も聴いてくれなかった曲がこんな風に皆に歌ってもらえるなんて」と言っていたが、これこそがグドモの格闘の証なのだと思った。長い不遇の時代にも腐ることなく、常に聴き手に向けて開かれた曲を作り続けてきた彼ら。だからこそ、全ての曲が武道館で鳴るために作られたようなスケール感を持っているように感じたし、今こうして実際に鳴っている様子には、深い感動があった。その後は“ディスポップサバイバー”“ イチ、ニッ、サンでジャンプ”など新旧のキラーチューンを撃ち放って本編終了。アンコールでは、事前のファン投票の中から選んだ“アカクモエテイル”など3曲を披露し、銀テープが華々しく発射される中で2時間半のステージは幕を閉じた。

間違いなくキャリア最高の舞台だったが、本編終盤で金廣は「正直チケットはソールドアウトしてないし、大成功とはいえない」と悔しさを滲ませていた。さらに「また絶対に武道館にリベンジしに戻ってきます」とも言っていた。終演後にはアルバムツアーの開催を発表。そのひたむきな活動の先に必ずやリベンジの日が訪れることを期待しながら、今後もグドモの挑戦を見守っていきたい。（齋藤美穂）

セットリスト
1. 拝啓、ツラツストラ
2. キャッチアンドリリース
3. 光となって
4. コピペ
5. 言葉にならない
6. 突破していこう
7. inトーキョーシティ
8. ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
9. コールアップ
10. ミサイルをぶちかましてぇな
11. 空ばかり見ていた
12. そして今宵は語り合おう
13. アブラカタブラ
14. だけど不安です
15. 友よ
16. ディスポップサバイバー
17. ファイティングポーズ
18. 餞の詩
19. 輝く方へ
20. ハローハローハロー
21. イチ、ニッ、サンでジャンプ
アンコール
22. アカクモエテイル（リクエスト楽曲）
23. STAY WITH ME
24. 未来へのスパイラル