【コラム】RADWIMPS、世代もジャンルも超えた奇跡の「胎盤」ツアーとは何だったのか?

【コラム】RADWIMPS、世代もジャンルも超えた奇跡の「胎盤」ツアーとは何だったのか?

Mr.Childrenを対バンゲスト(!)に迎えた11月28日の追加公演をもって終了した、RADWIMPSの企画による2マンツアー「RADWIMPSの胎盤」。前半戦のZepp会場7公演(http://ro69.jp/news/detail/134406)、横アリ3DAYS+追加公演(http://ro69.jp/feat/radwimps_201511/)の模様をそれぞれここRO69でもお伝えしているし、僕自身もSpitz/Mr.Childrenとの奇跡の共演を目の当たりにしたのだが、その1本1本を全身全霊傾けて謳歌するRADWIMPSの姿から浮かび上がってきたのは、カウンターカルチャーとして時代にロックの礫を投げつけていく先鋭性よりも、「時代/世代をつなげる存在」としての覚醒感だった。

もともとは盟友ONE OK ROCK・Takaと野田洋次郎の会話から発想され、メンバー自身がゲストアーティストに直接出演をオファーしたという「胎盤」ツアー。その最大の特徴は、デビュー10周年のRADWIMPSを中心に、米津玄師/きのこ帝国/plenty/ゲスの極み乙女。/ONE OK ROCK/クリープハイプ/いきものがかり/ハナレグミ/LOVE PSYCHEDELICO/Spitz/Mr.Children……といった具合に、世代もジャンルも超えた対バンを実現させていたことだ。

「偉大な父親みたいなものなんです」とRADWIMPSへの想いを語った、今回の対バンゲストの中で最も若い米津玄師。野田とは3歳しか違わないが「高校時代からRADWIMPSを聴いていた」というゲスの極み乙女。・川谷絵音。最近結婚したという元カノと付き合っていた頃に4枚目のアルバム『RADWIMPS 4~おかずのごはん~』を一緒に聴いていた、と明かしたのはクリープハイプ・尾崎世界観。さらに、Mr.Children・桜井和寿は「サッカーで言う『オーバーエイジ枠』で2枠、スピッツと僕ら(笑)」と冗談めかしつつ、RADWIMPSの楽曲に衝撃を受けて後に自らBank Bandで“有心論”をカバーしたことを話していた。10年間にわたり僕らリスナーの生活を彩ってきたRADWIMPSの音楽が、先輩/後輩問わずアーティストの人生と魂をも揺さぶってきたことが、対バンゲストの言葉からもリアルに窺える。

そして――そんな「つながり」は、他でもないRADWIMPSのメンバー自身もリスナーとして体験してきたものだ。18歳くらいの時に悲しい出来事があって100回くらい“ハンキーパンキー”を聴いた、とハナレグミの音楽との日々を振り返り、「アメリカにいた4年間、テープが擦り切れるくらいまでミスチルを聴いていた」「小5くらいで日本に戻ってきてから、ずっとスピッツを聴いてました。僕にとっての『愛してる』『好き』っていう言葉の中には、何割かスピッツがいる」と大先輩2組に対して感謝を捧げた野田洋次郎は一方で、年下のきのこ帝国が鳴らす音楽に「高校くらいの時に聴いていたら、どれだけ救われただろう」と最大級の賛辞を贈っている。「ひとり」と誠実に向き合ってきた表現者だからこそ、音楽を通して「ひとり」同士がつながる大切さ、自分がその「つながり」をもっと大きなスケールで作れる可能性を、改めて切実に認識したのだろう。

「こんなに僕は音楽を、昔から好きじゃなかった気がします、10年前は。だけど、音楽を聴いてるみなさんとか、ライヴで伝えようとする音とかが、音楽をどんどん好きにさせてくれて。みなさんのおかげでもあって、今は『なくてはならない』ものになってしまって……死にたくない想いでいっぱいです。作りたいものを作り続けて、自分のかわいい子供のように育てて、みなさんのところに届けようと思います」

Mr.Childrenとの追加公演で、野田はそんな言葉で赤裸々に自身の気持ちを語っていた。また、デビュー10周年記念日となった11月23日・スピッツとの共演では、アンコールの“スパイダー”セッションの直前に「連鎖していくといいですね。誰かと10年後、ここに立てたら……」と「今」の感慨と「これから」への意欲を覗かせてもいた。《ゼロで生まれた僕なのに 今名前を呼ぶ人がいて》《僕もどれだけ遺せんだ ねぇどれだけ生きれんだ/時間以外の単位で》……野田が“‘I’Novel”に綴った真摯な想いがそのまま形になったような今回の対バンツアー。そして、12月23日の幕張メッセワンマン公演に彼らが冠したタイトルは、「RADWIMPSのはじまりはじまり」。さらなる進化と飛躍の季節が、ここから始まっていくに違いない。(高橋智樹)
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